main 〜Marchen〜

□王子様におやすみの、
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「あはは、王子ぃ、王子ぃ、あはははッ!!」
「メルヒェン、」
満面の笑みで名前を呼ばれたのにも関わらず、王子は溜息をついて名を呼び返した。
メルヒェンの部屋に、二人きりでいるのに。
何故なら。
「♪お〜うじ〜おうじ〜〜あはははっ」
メルヒェンの持っているグラスを取り上げて王子は窘める様に言った。
「メルヒェン、もうそろそろやめた方がい」
「いいの、いいの〜。私が飲んでる事なんて、誰も気にしないよぅ」
のだが。
それは直ぐにメルヒェンの手中に戻る。奪い返したグラスの中身を飲み干して、メルヒェンはふふふ、と笑った。
話さえ聞き終えずに返答するメルヒェンの声色は、既に出来あがっちゃっている、そのものである。
「何て事だ……」
ワインを持ってメルヒェンの部屋にやって来たのは王子だ。
しかし、それは以前メルヒェンが「眠れない」と度々口にしていたから就寝前に少量飲めばどうだろうかと、試しに持ち込んだまでの事。
まさか、彼がこんなに酒に弱いとは。その癖に呑みたがりだとは。
「メルヒェン、僕は就寝前に少しだと言ったじゃないか。今飲んでしまえば、なくなってしまうよ?」
「なくなっちゃえば、次のワイン買ったらいいじゃないか〜。ねぇ〜おうじ〜?」
あはは、と笑い転げた後、メルヒェンは王子の隣に座り、彼の肩に頭を乗せる。
「!」
目と鼻の先にある彼の顔は、いつもの肌の白さに、酔いの所為で紅潮した頬のコントラストで彩られている。
「(!!……か、わいい……!!)」
余りにも王子の理想に叶い過ぎる彼は、はしゃぎ疲れたのか王子の肩を借りたままうつらうつらとし始めていた。
「ふふ…王子、王子っ」
「メルヒェン」
そっと髪を撫でると、メルヒェンはくすぐったそうに笑う。
「ふふふっ」
無邪気で無防備なその笑顔に、王子は言葉を失くす。

無言でメルヒェンに向き直って、王子は彼の頬を撫でた。
赤い頬は熱を帯びて、掌にその跡を残す。
王子は、メルヒェンに己の顔を近づけた。

「頂きます」
そっと、小さな声で呟く。
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