main 〜Marchen〜
□生垣に挟まれて
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王国立音楽大学。彼の午後の授業は休講となっていた。
「ふぁぁ……」
まどろんで閉じかけていた目を擦り、王子と呼ばれる彼は暢気にあくびをしていた。
いくら王子と言われようとも、周りから持て囃されようとも、一人になりたい時位ある。そんな時によく来ているのが、中庭だった。
中庭のベンチに腰掛けている王子。ベンチの縁に足を乗せて、三角座りの様な形で、ぼんやりと空を見上げている。
微かに水色が乗っただけの薄い色の空に、同じく薄く白を纏っただけの雲が広がる。
快晴とは違ったものだが、此れは此れで美しいものだった。
「そう…、あとは此処に、美しい鳥の音色でも聞こえればよいのだけれど」
ふと呟いて、気まぐれに耳を澄ましてみた。その時。
カシャン… カシャン… カシャン…
「……ん?」
自分の重い描いていたものとは遥かに違う音が耳に入り、王子は首を傾げた。
如何考えても小鳥のさえずりではない。
金属質の、たとえば鎖のようなものが揺れてぶつかるような、そんな音。其れが規則的に続いていた。
静まり返ったこの中庭に響く無機質な音は、ある意味一種の恐怖を連想させる。
「(…ほ、ホラー映画じゃあるまいし…)」
そう自身に言い聞かせた所で、一度気になりだしてしまったものは仕方がない。それに加えて、音は、確実に王子の方へと向かってきていたのだから。
思わず、ごくり、と息を潜めて生唾を飲み込む。
その音の正体が何であれ、必ず暴いてやるなんて、意味の分からない決意を決めた時だった。