main 〜Marchen〜

□夢の中でさえ
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「メル、どうしたんだい?」
午前の講義を終えて学生食堂へと向かう道で、王子はそう尋ねた。
時々お昼を一緒出来るようになった新しい友人は、今までの友達とは少し違っている。違った魅力を持っている、と言った方がよいだろうか。
言葉数は少ないものの彼の一言一言の意図を、その声や仕草、表情から察していくのが王子には楽しいらしい。
今日も少し離れた棟まで彼―――メルヒェンを迎えに来ていた。

しかしどうも、今日はメルヒェンの様子がおかしい。
隣を歩いている筈のメルヒェンは、時々立ち止まったり、右へ左へと身体を揺らしている。
時々話の途中で良いフレーズが思いついた時にも身体を僅かに揺らしたり口ずさむ癖はあるが、いつものそれとも違っている気がする。
足取りもふらふらとしていて、見ていて危なっかしい。思わず居ても経ってもいられなくなって、王子は問いかけた。
「大丈夫かい、メル?さっきからふらふらしているじゃないか」
「……ん…」
返事までしているのかいないのか分からない程に簡素なもので、更に王子の不安感を増幅させる。
「…あぁ…。最近あまり、」
漸く口を開いたものの聞き取り辛いメルヒェンの声に、王子は耳を寄せる。
「うん?」
「寝る時間が…なくて……ね――――ッ……」
「メルっ!!!!??」

言葉を言い終わらない内に、メルヒェンの身体と意識は力を失った。
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