main 〜Roman〜

□Le parc
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「…ん?」
「どうしたのだね?」

今日何度目にもなる光景。首を傾げたイヴェールに、サヴァンは訊ねた。
原因は知っている。サヴァンも気になってはいたが、敢えて触れなかったのだ。折角イヴェールと一緒に居られる時間を、そんな事の為に費やしたくはない。時間の無駄だ。

「ねぇ、サヴァン…」
こんな麗らかな幸せな午後を。晴れ渡った空と同じく、心地よい心の中を。わざわざこんな時に、曇らせなくてもいいではないか。
「あの子達、知り合い?」
嗚呼、聞きたくないその言葉が耳に入ってきた。イヴェールが言葉と共に指差す先には、公園の茂みに隠れてこちらを伺う二つの小さな影。
「…知らないが」
「ふぅ、ん…」
と言いながらも、イヴェールは早くもベンチから立ち上がっている。少し、嫌な予感がした。
「イヴェール?」
「うん?」
明らかに返答が話半分で聞いています、と主張している。少しばかりではなく、かなり嫌な予感がした。
サヴァンは歩き出すイヴェールに一拍遅れて立ち上がり、彼を引き止めようと腕を掴む。しかし、彼の歩みが止まる訳も無く、そのままずるずると引き摺られるように付いていく羽目となった。そして、目標の茂みの前にしゃがみ込む。
「ボンジュール」
にこ、と微笑むイヴェールと呆れ顔のサヴァンの前には、恐らく兄弟だろう、二人の子供がいた。二人ともこちらから声をかけるとは予想だにしなかったのだろう、驚きで口をぽかんと開けて見上げるばかり。
「ぼ……ボンジュール」
先に挨拶を返したのは、兄と思しき子の方だった。兄の言葉が耳に入って理解したのか、弟の方が小さく叫んだ。
「あっ、兄ちゃんずるい!僕が先にかっこいいお兄ちゃんと話すのにっ!」

「……かっこ、いい……?」

きょとん、と目を瞬かせてイヴェールがサヴァンの方を向いて訊ねてくる。正直サヴァンには、小首を傾げる彼の姿は、可愛い以外には思えないのだが。小さな子供の言うことだ、そういう事もあるのだろう。
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