main 〜Roman〜

□Un instant.
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どうしてそうなってしまったのか、皆目検討がつかない。

「…ぅッ……アビス…!」
私がぎゅ、と抱く力を強めれば、彼は私の上でにやりと口の端を吊り上げる。そして、軽く私の唇に己の唇を重ねて、押し付けてきた。
「ん…ン…」
その感触から逃れようと首を振れば、シャツの中に入れられた手が上へと這わされる。
「…ゃ…待って…」
「なら大人しくしていてくれると、有難いのだけれどね?」
今度は耳元で囁き、耳朶を軽く噛まれた。反射的に、身体がびくんと震えるのを感じる。
何かを言わなくては。どうにかして、此の行為を中断させなければ。そうしなければ、私は…。
「アビス……っふ、ン…!」
口を開けた瞬間、口の中に何かが侵入する感触を憶え、私は身悶えた。口内で、彼の舌が私のそれを絡め取り、優しく撫ぜてくる。
「は、ぅ……、んッ、ん…」
一度意識して緩めていた腕が、彼を引き寄せてしまう。
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