main 〜Roman〜

□Ca m’etonne!
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ある晴れた日。沢山買い物をした、帰り道。

コツ…コツ…

規則正しく響くのは、イヴェールのブーツの音だ。同じように包みを抱えて隣を歩くサヴァンの足音より、少し高い音だからよく響く。


コツ…コツ……コ、コッ…

不意にサヴァンが脇道に入り、慌ててイヴェールもその後を追いかける。再び隣に並ぶと、安堵の溜め息をついた。
「サヴァン、曲がるのなら言ってよ!びっくりしたじゃないか」
「おや…そうかね?」
立ち止まり微笑を浮かべるサヴァンに、イヴェールも足を止めて少しむっとした表情を浮かべた。
「そうだよ!この道通るの、僕は、初め――」

不意打ちだった。
サヴァンは何も言わずにイヴェールの肩を引き寄せる。抱き込まれる感覚。近付いてくる顔。
「!ん……!?」
触れる、唇のぬくもり。

サヴァンは数回唇を啄ばむと、直ぐに唇を離した。

対するイヴェールはというと、突然の事に目を丸くさせている。唇が離れてからようやく事態を把握した様で、頬を真っ赤にさせた。
半開きになった口が何か発しようとするが、うまく言葉になって出てこない。
「何を赤くなっているのだね?」
ここぞとばかりに覗き込むようにして顔を近づけてくるサヴァンに、イヴェールは反射的に目をそらそうとした。が、そらせなかった。
引き寄せられるかの様に、サヴァンと見詰め合う。

そこでようやく堰を切ったかのように、イヴェールが声を出した。
「だ、だって!……サヴァンが、突然…!」
反論も途中で、イヴェールが再び言葉を失う。サヴァンが髪に触れたからだ。
そのまま手に持った房にそっと口付ける。
「君が、可愛かったものだから、つい」
そして、余裕気な、微笑。
「―――ッ!サヴァンっ」
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