main 〜Roman〜

□A bientot.
1ページ/3ページ

「オーギュスト!」

突然ノックも無しにドアが開け放たれる音に、オーギュストは振り向いた。
「…アビスさんか」
「あぁそうだアビスさんだが…と言う為に来たのでは無い!話をしに来たのだよ!」
ツカツカと靴音を響かせて近付いてくる男に、完全に向き直る。
「話を聞いて欲しいなら、賢者さんの方が適任だと思うのだが、どうかな?」
「あの男は駄目だ。話相手になると言って、延々と話し掛けてくるからな。…それに、私は君に頼みがあるから来たのだが」
「私に…かい?」
目を瞬かせ、はっ、と気が付いた様にエプロンで石膏の付いた手を拭う。手近な椅子を引き寄せ、座るように勧めた。

「私とエルの絵を描いてくれないか?」

座るや否や唐突に切り出された話に、向かいに座ろうとしたオーギュストは再び目を丸くさせる。
やや間を置いて
「…残念だけど、私は彫刻家だ。画家じゃない」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ