main 〜Moira〜

□星空と追憶と、
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月光の下で照らしだされた白い肌。珍しい紫のメッシュがかった銀髪が夜風になびくと、無造作に掻き上げられたそれから覗く紫水晶の様な瞳が、月を映していた。

その光景が余りにも幻想的過ぎて、声をかけることさえも忘れて、見つめている事しか出来なかった。


―――あ、と。
心の中で自分が呟いたのが分かった。
自分の視界の中の人物が、自分に視線を向けたから。
―――どくん、と。
心臓が、跳ねあがる。

「オルフ…?」
澄んだ声で名前を呼ばれて、彼の瞳の中に自分がいるのだろうと思うと、何だか胸が熱くなってくるような気がする。
「ぼーっとしてるな。どうしたんだ?」
そんな自分に気づかれたくなくて、オルフは視線を逸らした。ぶっきらぼうな口調で返答する。
「……ぼおっとしてたのは、貴方の方でしょう?閣下」
「うん?」
「拠点をこっそり抜け出して、一人で月見ですか。伴も付けずに、こんな肌寒い中で」
言いながら視線を向けると、エレウセウスは困ったような笑顔を浮かべて肩を竦めた。
「何だか眠れなかったんだ。ただそれだけの為に、誰かを起こすのは悪いからな」
微笑を浮かべた後、エレウセウスは再び夜空を見上げる。
オルフはひとつ溜息をつくと、エレウセウスの隣に腰を下ろした。
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