main 〜Moira〜

□秘めたる決意。
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「少し、気分転換でもしようか」
不意にそんな事を提案されて、身構えていたオルフはきょとんと目の前の上司の顔を見た。
「閣下…どうなさったのです?」
思わず口をついて出た疑問に、明らかに困惑の感情が浮かんでいる。
つい10分ほど前に、二人で戦闘訓練を始めたばかりだったからだ。
外見上でも、そして実際の手腕的にも、オルフの戦闘に関しての腕はそこまで上手いというものではなかった。それを心配してか、エレウセウスは度々自分の時間を割いてオルフの稽古に付き合ってくれている。出会ったばかりの頃と比べれば日進月歩のペースではあったが、体捌き等彼なりに上達しているのが分かる。
エレウセウスもそれが分かってなるべく暇な時間は稽古を組んでくれるし、オルフもそんな上司に感謝し、それに応えるべく稽古に勤しんでいる。今もいつものように稽古していた最中だったのだ。
まだ然程身体も動かしていない中でのその一言。
咄嗟にオルフの頭の中では、「私はなにか悪い事をしただろうか」「稽古がつまらなくなったのだろうか」「それとも何処か怪我をなさっているのだろうか」と思い当たるだけの予測が廻り始める。
そんな彼の様子を見て、エレウセウスは腰に手を当てた。
「只私が休みたいだけだ。……と言ったら、どうする?」
悪戯っ子の様な笑みを浮かべて言うエレウセウスに、オルフも自然と笑みを浮かべてしまう。
「畏まりました」
「そんな硬くならなくてもいいんだよ、オルフ」
「はい」
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