長編
□永遠の誓い
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僕と九郎。
彼女と出会ったのは、ほぼ同時だった。
でも、彼女を想うようになったのはきっと僕の方が先だ。
僕は初めて会った時から彼女に惹かれていた。
白龍の神子としての興味もあったかもしれない。
けど、それだけじゃない。
彼女を知れば知るほど惹かれ、いつしか愛しく想うようになっていた。
そして、それは僕だけではなく他の八葉の何人かも…。
その内の一人が九郎…。
九郎は彼女を想い、いつしか彼女も九郎を想うようになっていた。
他の八葉達は二人を祝福し、見守っていたが、僕は…。
僕だけは彼女を諦めきることができなかった。
戦いが終わり、彼女は元の世界には戻らず九郎の元に残った。
幸せそうな彼女と九郎。
僕の心の中の彼女を愛する想いは募る一方だった。
それでも愛する人と親友が幸せになってくれるなら、この想いは一生誰にも語らず秘めておこうと思った。
けど…それは正しかったのだろうか…。
僕はあの時、彼女を九郎の元に留まらせず、元の世界に帰すべきだっんじゃないか…。
そう思えてならない、あんなことになるぐらいなら…。
九郎が死んだ…
++++
戦いが終わり、望美は九郎の元に残った。
そして近日、祝言を控えていた。
九郎との祝言をあげるまで、望美は梶原兄妹が住まう京邸に世話になっていた。
戦いの後の後処理などで九郎は鎌倉に出掛けていて、帰ってきたら祝言をする約束だった。
「はぁ…九郎さん早く帰って来ないかな…」
望美は京邸の庭で空を眺めていた。
愛しい恋人の帰りを待つ時間はとても長く感じた。
「こんにちは、望美さん」
「弁慶さん!」
久しぶりに会った弁慶に望美は笑顔を綻ばせる。
「弁慶さん、いつ鎌倉から帰ってきていたんですか!?」
「たった今ですよ」
九郎が鎌倉に行く際、弁慶も軍師として一緒に鎌倉にいったのだった。
「あの…九郎さんは?」
「九郎はまだ鎌倉ですよ。少し、後処理が長引いていていまして」
「そうですか…」
望美はがっくり肩を落とす。
その反応に弁慶は申し訳なさそうな顔をした。
…僕では九郎の代わりにはなりえないから…。
「そう気を落とさないで…、遅くても来週には帰って来ますよ」
「そうですよね…」
「……望美さん」
「はい?」
「僕は…」
弁慶は一瞬何か言いかけようとしたが、すぐに口を固く閉ざした。
望美は、ん?っと首を傾げた。
「…いいえ、何でもないです。すいません」
「…?」
++++
いけない…この想いは一生告げないと決めていたはずなのに…。
自分の想いを告げれば、彼女を困らせてしまうだけだ。
言葉には決して出さない。
けど、心の中で想うだけなら自由だ。
望美さん…
僕は君を愛しています…。
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