長編
□この愛しさが僕のすべて
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自惚れていたんだ。
君が僕にだけ特別な表情をしてくれていると…。
僕を想ってくれているんだと……。
馬鹿なのは僕だ……勝手に勘違いしてしまったのだから。
君にとって僕は……他の仲間たちと変わらない存在だったのに…。
傍にいてほしいと…願ってしまった…。
抑えることができないほど愛してしまった……。
この愛しさが僕のすべて
「今宵だけでいい……僕に君をください」
「…べん…けい…さん…」
「僕を哀れだと思うなら……少しでも僕を好いてくれていたのなら…」
天女を恋焦がれる哀れな男に一夜限りの契りを許してください。
僕はこの記憶を支えに生きて……そして散る。
さようなら…僕のたった一人の愛しい人……。
どうか……元の世界で幸せになってください。
僕以外の男と結ばれて……それでも幸せになってくれるなら…僕は…。
………本当は……君を帰したくなんてなかった。
この腕の中に閉じ込めてしまいたかった。
けど…僕は君の笑顔が何より好きだから……。
君を傷つけたくないから……だから…。
僕は精一杯の笑顔で君を手放した。
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