長編

□この愛しさが僕のすべて
1ページ/5ページ





自惚れていたんだ。






君が僕にだけ特別な表情をしてくれていると…。







僕を想ってくれているんだと……。







馬鹿なのは僕だ……勝手に勘違いしてしまったのだから。







君にとって僕は……他の仲間たちと変わらない存在だったのに…。







傍にいてほしいと…願ってしまった…。







抑えることができないほど愛してしまった……。




















この愛しさが僕のすべて



















「今宵だけでいい……僕に君をください」








「…べん…けい…さん…」








「僕を哀れだと思うなら……少しでも僕を好いてくれていたのなら…」








天女を恋焦がれる哀れな男に一夜限りの契りを許してください。







僕はこの記憶を支えに生きて……そして散る。








さようなら…僕のたった一人の愛しい人……。







どうか……元の世界で幸せになってください。







僕以外の男と結ばれて……それでも幸せになってくれるなら…僕は…。







………本当は……君を帰したくなんてなかった。







この腕の中に閉じ込めてしまいたかった。








けど…僕は君の笑顔が何より好きだから……。







君を傷つけたくないから……だから…。







僕は精一杯の笑顔で君を手放した。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ