暫時を唄う御伽噺

□昨日の敵は今日の…
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「ただいまぁ」
「おたんこルカおかえりー」
「お邪魔しますデスりゅん」

 開いた扉から荷物を抱えて入って来たルカ。と予期せぬもう一人に、仲間は沈黙に包まれた。

「「「「「〜〜〜〜〜〜!!!???」」」」」

 その数秒後、一斉に声にもならない叫びを上げた。
 もちろん直後に宿主から騒音への厳重注意された。



昨日の敵は今日の…




「ちょっと! なんでハスタがいんのよっ」
 イリアはひそひそ声でにこにこ笑っているルカに問い詰めた。
「そうだぜ! あいつ、めっちゃ堂々と槍持ってんだけど!?」
 同じくスパーダもルカに詰め寄る。それににこにこ笑ったままルカはさも当たり前のように答えた。
「街の中で会ってね、ハスタ曰くナンパなんだってさ」
「なんだよそれ! ナンパ? ナンパなのか? お前、あの世への片道キップ買わされそうになってるんだって、きっと!」
「そんなことないよ」
「ミルダ……せめて連れてきた理由を教えてくれ」
 リカルドは常識的な答えを求めていたが、天然ルカと狂人ハスタにそんな言葉は辞書に載っていないのだ。
 つまり、返ってきた答えは一つ。
「連れてきちゃった」
「連れてこられマシタ。めでたしめでたし」
 質問と返答が咬み合っていない。理由を述べる述べない以前の問題。聞いたリカルド自身、頭を抱えた。
「理由なってないじゃん! それにまだ終わってない、始まったばっかりよ! めでたし言うな!」
「オレ的には坊やと会えた時点でめでたしなんだポン。はいお前死刑執行サヨウナラ」
「上等よ! あんたの体、穴だらけにして殺る……!!!」
 般若の顔で得物を取り出すイリアにやれやれと言った感じに肩を竦めるハスタ。ルカはエルマーナとコーダ(と一応スパーダ)を連れて階段近くまで避難し、アンジュとリカルドもルカたちの反対側に移動する。一触即発の不穏な空気。

「あんたらねぇ、どんちゃん騒ぎなら外でやってくれる? 他のお客様の邪魔なんだよ!!」

 を、呆気なく壊した英雄は宿主さん。相当頭にキているのか鼻息が荒い。それには流石のイリアも冷や汗かいて黙り、ハスタは訳が分からないと言った表情で呆けている。
「……怒られちゃったね」
「ねー……脳内裁判官がショック死して傍聴人たちが火災訓練しだしたぷぅ」
「火災訓練は大切だよ。僕、最近しょっちゅう火事起こしちゃってるし」
「あらまー。放火は結構罪が重いのになんてことやってんの」
「放火じゃないよ! それにイラプションなら火事程度だけどメテオスォームだとクレーターまで作っちゃうんだよね」
 そろそろと他の仲間が身を縮こませて寄ってくる中、二人はそんな会話を淡々としていた。クレーターなんて化石モノだよねー、と意味不明な話を耳に入れ胃を痛めるリカルドに気付く人間は誰もいない。
「ルカ君、どうしてそれと一緒にいるの?」
 アンジュが小声でルカに聞くと、ルカは軽く頬を褒める。それに一同少し嫌な予感が押し寄せる。
「「街で逢ったが百年目」」
「「ハモるなあぁ!!!」」
「晴れて恋人になれました、なっちゃいました。めでたしめでたし、祝えよお前ら」
「おー祝うぞ、しかし」

 ……………………………………………………

「「「「「!! え゛、えええぇぇぇ!!!!????」

 どさくさに紛れたハスタの告白に、コーダ以外の仲間が冒頭の叫びも比にならないほどの声を上げた。
 大声に反し予感的中に誰もが顔面真っ青、その場で倒れそうだ。
 そうして今度こそ宿屋から追い出されたとかなんとか……。



(昨日の敵は今日の恋人)

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