暫時を唄う御伽噺

□これが僕流プロポーズ
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「ボンゴレ、死んで下さい」


 僕のため 貴方のために




これが僕流プロポーズ




「えっ、かなり突然……」
「でしょうね。僕がいきなり貴方の部屋に土足侵入したんですから」
 何の前触れも無く窓から入って来た上、白っと答える僕を見て、ポカンとする彼。
 ……それより、喉が渇きましたよ。
「ってちょっと待て! 何で当たり前みたいな顔してオレの隣に座ってんの!? てあーー!! それ、オレのジュース!」
 僕がジュースの缶に口を付けた途端これ。相変わらずテンションが高い。叫びすぎて顔が赤くなっている。
「くふふふ、間接キスですね」
「キモチ悪いよッ! 第一死んでって……」
 キモチ悪いとは失礼ですね。この僕と間接キス出来ること、光栄に思ってほしいくらいですよ。
「死んで下さいの意味が分かりませんか? 如何せん頭が足りないようで」
「分かるよ、そのくらい! バカにするなっ」
 ぷいっと顔を背けるボンゴレ。本当に男か疑いたくなる。そしてその仕草が似合っているから余計に疑わしいものだ。
 まぁわいわい談笑はこのくらいに切り上げて、
「ボンゴレ、僕はボンゴレが憎いです」
「……知ってる……」
 さっきまでの元気は何処へやら。俯いた彼の表情は分からないが、その声は哀しげだ。
「ですが、」
「?」
 ボンゴレは眉を下げたまま窺うように顔を上げた。
「沢田綱吉君」
「なんでフルネーム……」
 くふふ、こんな時でもツッコミは欠かさないとは流石ですね。
「僕は綱吉君を愛してます」
「…………愛憎……?」
「正解。ですがハズレです」
 僕の言葉に自信の無い声色で呟くように聞いてきたボンゴレは、僕の矛盾した返答に戸惑いを隠せずにいる。
「じゃあ、何」
「僕はボンゴレが憎いんです。貴方個人は、魂ごと愛してます」
 もう一度、繰り返す。
「僕は、ボンゴレを消したいほど憎んでいます。僕は、綱吉君を喰いたいほど愛しています」
 キョトン、とした。少しして彼はどっちも同じじゃん、と不思議そうに言った。
「消すと喰うの違いって?」
「消すは存在を無くして殺りたい。喰うは魂まで一つに成りたい、との違いです」
「…………」
 少しだけ黙ってから、
「奥深い……」
 と誤魔化すように漏らす彼は、やはり理解までは出来ていない。
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