記念を唄う御伽噺

□大人な子供の奪い合い
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「離せ、汚い手でこいつに触るな」
「いやいや。ここは平等にそっちが譲るもんだピョンよ」
「譲るのに平等もクソもあるか」

 こうしてまた始まりだした罵り合い。
 間に挟まれたルカは、両隣の大人たちを困惑した瞳で見上げた。




子供な大人の奪い合い




「とにかく触るな。貴様の飼っている細菌にミルダが感染したらどう責任を取るつもりだ」
「オレ、お家に帰ると何をするか知ってます? え? 知らない? 爪の間まで石鹸で洗ってるんデスよ?」
「知るか。どうでもいい、貴様の帰宅後習慣なんぞ」
「ん〜……ハスタって、キレイ好きなんだ?」
 大人同士の罵倒続きに、ルカは的の外れた疑問を述べる。
 ルカの右を占領するハスタは、罵り相手のリカルドの言葉を無視し、ルカが笑みを浮かべて問いかけてきたことに嬉しそうにする。
「坊や、イイ質問だ。そうなんだよね。オレ、とってもキレイ好きなんだポン。少し見直した?」
「うん。キレイ好きな人は好きだよ」
「だってさ、リカルド氏。残念デシタ」
「俺が汚い好きとでも言いたいのか? 大体、貴様こそ殺人後は爪に肉片でも挟まっているだろ」
「それはそれ。これはこれ」
 ルカのことは離さずに、リカルドを馬鹿にするもの忘れない。
「ふん……そんなことを言っている間はただの馬鹿だな」
「バカって言う方がバカだポン」
 ハスタのふざけた物言いに、無表情でリカルドは得物を取り出す。
 ハスタとリカルド、どうしても顔を合わすと罵り合い、それも小学生並の言い合いになる。
 だけのはずが、この大人たちはそれよりタチが悪く、言い合いが知らぬ間に殺し合いに発展するのだ。
「リカルド氏、あまり短気なのはダメだりゅん。短気は損気♪」
 そうしてハスタが鼻唄交りに馬鹿にすれば、実際意外と短気なリカルドは怒りを爆発させた。
「貴様……今この場で蜂の巣にしてやる、覚悟しろ!」
「そちらこそ、ミートボールにしてやるポン。ちなみにオレはリカルド氏肉団子なんて要らないので、飢えた野良犬にご提供。オレって意外と社会貢献者だったり」
「社会貢献者が大量殺人するか! 人間のゴミが!」
「あらら、ゴミときた。オレがゴミならリカルド氏はカスですな」
「……その薄汚い口から使えなくしてやる……!」
 結局いつもと同じように戦いだした二人に、悲しそうにルカは眉を八の字にした。

(二人とも僕には優しいのに……何でお互いには優しくしないんだろう? 仲良くすれば戦う必要もないのになぁ)

 と悩むルカには、ハスタとリカルドが手を取り合って仲良くしている図も微笑ましいモノらしい。
 他の人間なら想像しただけで失神するであろう、不気味な図だが。
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