黄昏の騎士

□綺麗な使用人
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「…貴様がやったということは、分かっているんだッ!!
さっさと吐けッ!!」

バンッ!

エミリオは机をめいいっぱい叩いた。

「…なんで取り調べみたいになってんだよッ!!
この変態メイドフェチがッ!!」

あたしはキッとメイドフェチを睨む。

「…貴様…ッ!!
どうやら死にたいらしいな?」

「…ふん、図星かッ!?」

クックックッ!と、喉を鳴らしてあたしは笑ってみせた。

「違うッ!!
これはヒューゴが命じた事だッ!!」

「…ふ〜ん。
…そうやって、人のせいにするんだ?」

あたしがそう言うと、彼は更に反抗的な瞳になる。

「…貴様ッ!!」

『…ふたりとも、話が進みませんよ?』

リオンの怒りのボルテージの限界を悟ったのか、それともなんか色々な事情を悟ったのか、シャルが止めに入った。

「…そうね。
それじゃあ、あたしの質問にイエスなら『はい』、ノーなら『ええ』と答えなさい」

「…なんでそんな面倒くさいことをしなくてはいけないんだッ!!」

「逆転の一手を防ぐ為よ!」

『…いやいやいや!』

シャルは呆れまくっていた。

「…早く貴様の質問を言え、こっちは貴様に構っている時間はないんだ!」

「…ちっ!
…わーったわよ!」

…あたしは「よし!」と覚悟を決める。

「…あたしの事、覚えてない…?」

「覚えてないな」

彼は冷たい声で言った。

「…ミライのことは?
…みんなの、ことは?」

「…知らないな。
聞いた事もない」

『僕とは坊ちゃんは、小さい頃からの付き合いですけどそんなことはなかったと思いますよ』

「…そう」

……やっぱり、エミリオじゃないのか…。

「そっちの質問が終わったなら、今度はこっちの質問に答えてもらう」

……質問?

「貴様は、どうして天井から振って来た?」

…ああ、そんなこと、か…。

「…さぁね、あたしも分からないは?」

「そんな筈ないだろう?」

「本当よ!
…そもそもあたしにだってよく分かんないんだから…!!
目覚めたら変な竜の飛行船みたいなのに乗ってるし!!」

…あたしがそう訴えると、彼の表情が変わった。

「……竜の飛行船だと?」

「そーよ!竜よ竜!!」

『…まさか、飛行竜の事ですかッ!?』

「…あんたらがそう言うなら、多分飛行竜だと思う」

「…何故、貴様はそれに乗っていた?」

「…だから、あたしにも分かんないんだって!
…気付いたら、飛行竜に居たのよ」

『記憶喪失ってことですか?』

…違うけど、異界から来たっていうと、あやしまれそうだしな…。

…今もなんか疑われてるっぽいし。

「大体そんな感じかな?」

「…大体?」

「多少なら覚えてるし」

ジト〜とした目で見られる。

…うわっ!
全然信じてないよコイツ!!

「……分かった。
…それなら、飛行竜に剣がなかったか?」

「いや、剣って言われても…?」

「シャルみたいな剣だ」

…シャルティエみたいな?

「…ってことはそれも喋るんでしょ?
そんなものはなかったと思う。
…あ、でもスタンが不思議な形をした剣を持ってた」

「…スタン?」

リオンの眉がピクリと上がる。

「…一緒に飛行竜から脱出しようとしたのよ」

「……それで、そいつは今どこに?」

「さあ?
脱出ポットに乗って落ちてったから、多分雪の地方だと思うけど?」

「…ファンダリアか」そうエミリオが呟く。

『それで、なんでユウは天井から?』

「…スタンを乗せたのが最後の脱出ポットだったのよ」

「…………」

リオンは黙ってあたしを見詰める。

『…えッ?
それじゃあ、どうやって脱出をッ!?』

「…それが分かれば話してるわよ。
…爆発したのは分かったんだけど、そっから意識飛んで…気付いたら、天井突破ってたわ…」

「…それは本当か?」

「…彼女はきっと嘘をついてないわよ」

不意にドアがガチャッと開いた。

「…マリアンさんッ!!」

彼女が持っているお盆にはお茶がふたつ置かれていた。

「…少し、お茶っ葉が切らしてて、買いに行って来たの」

ふわりと彼女はそう笑った。

「…マリアンッ!!」

リオンの血相が変わる。

「いいじゃない、エミリオの親友なんでしょう?」

「……なっ!?」

リオンがこちらを振り向く。

「…ともだち!」

…あたしがそう笑うと、彼は凄く嫌そうな顔をした。






……あれ?


……確かさっき、マリアン。





……“エミリオ”って言った?







……ど、どゆこと?
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