Dream
□王子の惚れたやさしさ
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あと何科目だろうか。
ため息を気付かれないようについてチラリと横を見れば、同じ学年のイザーク・ジュールくんが解答の見直しをしていた。
相変わらず真面目なことで。
あーあ何故こんな目に…。
だから校外模試はいやなんだ。
学校が集団で申し込むから、必然的に座席が同じ学校で固まってしまう。
だから普段は絶対にこんなに近くから見れないはずの憧れの君もお隣の席にいらっしゃるというわけで。
緊張でテストなんて解けるかっ!?
呼吸すら出来ているか疑わしいというのに。
「っくしゅ!」
「…(うぇぇえ!???ちょ、なに今の可愛いの?まじでくしゃみ?てかクーラー効きすぎだな確かに。場所的にクーラーの真下だし…ジュールくんが風邪をひいちゃうじゃないか…)」
スッ
「先生…」
気付けば、手を挙げて先生を呼んでいた。今まで、どんな窮地(えんぴつが落ちたり、消しゴムが落ちたり)に陥ろうとそんなことしたことなかったのに。
「どうしました?」
試験官の人が側まで来て小声できいてきた。あ、人の良さそうな人で安心。
「その…クーラーが…ちょっと…」
それだけ言うと分かってくれたようで、試験官の人はクーラーのリモコンの元へ行ってくれた。冷風の勢いも弱くなった。
* * *
「おい…」
最後の科目が集められたと同時に隣の人から声をかけられた。かに思えたが、彼がまさか私に話かけるなんてありえないので、私は荷物をまとめて、人でごったがえす前に早々と試験会場を出たのだった。
「ちょ、ま、っ貴様ぁああ」
(今日も元気に叫んでるなぁ…)
* * *
翌日。
私、正式にイザーク・ジュールくんからお呼び出しを受けまして、そして正式に親密なお付き合いを申し込まれてしまいました。
(え、あのクーラーですか!?クーラーの件がキュンだったんですか王子?!)
(さりげない優しさに飢えていた王子)