賜りし幸せ
□とある雨の日
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宿屋に泊まってしばらくした頃だったか、いつしか空は雨模様。
どうにも気分まで下がってしまう。
「買い出しに行くのか?」
「ええ、今日は私が当番だもの。
行くしか無いでしょう?」
今日の買い出し当番はティアか。
「俺も一緒に行くよ、大変そうだし」
「心遣いだけもらっておくわ。
心配しないで、一人でも大丈夫だから」
ティアはそう言って宿屋の傘を借りて外へ飛び出して行った。
「ルーク〜、ちょっと手伝って〜?」
宿屋の厨房からのアニスの呼び出し。
俺はティアの事を気にしつつ厨房に入った。
「ん?どうした?」
「野菜切るの手伝ってくれる?」
まあ、それくらいなら構わないだろう。
「分かったよ」
俺は包丁を持って、アニスが用意した野菜を片っ端から切り始めた。
「あ〜あ、雨って嫌だよね〜。
髪も自然と湿るしさ〜」
「あ〜、それはよく分かるよ。
俺も、髪が少し硬い方だからな、変に固まるんだよな」
正直ティアが羨ましい。
ティアは髪は、かなり柔らかいからか、癖がついた所なんて一度も見た事が無い。
「ティア、大丈夫か・・・?」
見れば雨に加えて風まで吹いている始末だ、どうにも心配だな。