幸せの場所
□思い出と約束
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空には満天の星星が輝き、月は、その光で白き花を一層美しく見せている。
そのすぐそばで一人の少女が溜め息を落としてどこか寂しげに立っていた。
その少女ティアは手紙をもちながら手を胸に当てて一つの言葉を呟く。
「ルーク・・・。」
それは、愛しき人の名。だがそれはすぐに消えてしまう。
ティアはもう一度手紙を呟く見てまた溜め息を落とした。
『明日、バチカル、ファブレ邸にてルークの成人の儀を呟く執り行う。貴女には旅の仲間として参加してほしい。』
【クリムゾン・ヘアツォーク・ファブレ】
ティアは白き花―セレニアの花を見ると、その手紙を破り捨てた。
「ルーク・・・あなたは約束したわよね。帰ってくるって。私も約束したわ。ずっと待ってるって。だから私はいかないわ。あなたが居ない儀式に興味はないもの・・・。私はまってるから。始まりの場所で。あなたとの日々がまた始まると信じて・・・。」
翌日、ティアは始まりの場所―タタル渓谷へとおもむいた。
ひときわ大きい岩に腰かけるとかつて彼が好きだといってくれた譜歌を紡ぎ出す。
彼を導くように―。
歌い終わるとかつて仲間たちがいた。みんな同じように気持ちだったのだ。
そしてその中の一人が口を開く。
「よろしかったの?ルークの成人の成人儀にあなたも呼ばれていたのでしょう?」
「ルークの居ない儀式に興味はないもの・・・。」 ティアが静かに答える。
「二人ともそう思ったからここに来たんでしょう?」
ツインテールの少女が問う。
「あいつは帰ってくるって言ったんだ。墓前に語りかけるなんてお断りってことさ!」
彼の親友が答える。
全員が前を見る。
眼前には、かつてのホド―エルドラントがある。
彼とともに戦った記憶―思い出がそこにはあった。
全員が黙るとずっと黙っていた蜂蜜色の髪をした軍人が口を開く。
「そろそろ帰りましょう。夜の渓谷は危険です。」
彼の言葉に一人また一人踵を返していく。
ティアも岩から降り、仲間に続こうとした。
その時―
最後までその景色を見ていた左目が何かを捉えた。
確かめようと今度は両目でしっかりと見る。
「―っ!」
そしてその目が映し出したのは―
懐かしい赤い髪、優しさの灯った碧眼。そして左手で抜けるようにしているローレライの鍵だった。
「どうして、ここに?」
声が震える―。
「此処からなら、ホドが見渡せる。それに――
約束してたからな。」
頬に滴がつたう。
「ただいま、ティア。」
「ばかっ。遅すぎよっ!私がどれ・・だけ心配したと思っ・・・て ・・・。」
「ごめん…泣かせちゃって・・・」
「ばかっ。責任とりなさいよっ!」
「・・うん・・・わかった」
「えっ?」
「まあ、俺はこれを伝えるために帰ってきたんだし・・・」
「何?」
「俺もティアが好きだ。あのときの告白、凄く嬉しかった。」
「聞こえていたの?じゃあ―」
「だって俺消えると思っていたから・・・それにつらい思いさせたくなくて・・・。」
「―っ!ばかっ!あなたが居ないだけでつらかったわよっ。これで責任とったと思わないでっ!」
「じゃあどうすればいい?」
「・・ずっと側にいて。そしてずっと側にいさせて。」
「わかった。ずっと側にいるよ。」
「それからもう一つ言い忘れてたわ。」
「何?」
「お帰りなさい、ルーク」
「・・ああ、ただいま。ティア」
約束してたから・・・・
いや、約束していなくても。
「ルーク。・・・」
「ティア。・・・」
「愛してる。・・・・」
おまけ