異次元の幸せ
□夢に向かって―出逢い―
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道路には自分と、近所の人が数人。自分と同じ制服を着た人は一人もいない。
中学校で大人しい性格だったティアは友達は少なくはなかったが、自分と同じ高校に行く人はその中にはおらず、ひとりで学校へ向かう。
十分くらい歩くと、大きい交差点に差し掛かった。そこは車の通りも多く、この地域では危険な場所だった。
ティアは信号を待っていた。
青になると左右を確認し歩き出そうとした瞬間、向かい側の車が急発進し、ティアの方へ突っ込んで来た。
ティアは突然の事に、足が上手く動かない。それでも車は突っ込んでくる。
『兄さん!・・・・』
もうだめだと思い、目を閉じた。 その瞬間――
「危ない!」
声が聞こえたと思うと、手を引かれ、抱きしめられた。
車は電柱にぶつかる。
痛みはこなかった。この人が手を引いてくれたおかげで、ギリギリで避けることが出来たのだ。
「大丈夫?」
その人が腕をほどきながら尋ねる。
ティアはこの人にお礼を言おうと、顔を上げる。するとそこには首のところまで切られた紅よりは薄い朱の透き通るような髪、優しそうな碧眼を持った端整な顔立ちの青年がいた。
「・・・・・・・」
ティアは一瞬見とれてしまった。 綺麗だったから・・・・
すると青年は心配したのかもう一度尋ねる。
「大丈夫?」
「ふぇ?あ、はい。だ、大丈夫です。本当に有難う御座いました。」
急に聞かれたため思わず変な声で答えてしまった。
「そう。良かった。」
青年は笑顔で言う。
「//////」
青年の屈託のない笑顔に、ティアは頬を染める。さっきから心臓がうるさいほど鳴り、抑えられない。
すると、青年の後ろから、二人の男女が現れる。男性の方は紅の髪、女性の方は金色の髪をしている。
「この屑が!無茶しやがって!」
紅の髪の青年が怒るように言う。
「アッシュ。まあ、いいでわないですか。二人とも怪我はなさそうですから。ルークも反省しているようですし。それにルークがしたことは立派なことですわ。でもルーク、あまり無茶はしないでくださいましね。」
金色の髪の女性が二人に言い聞かせるように言う。
「わかったよ…。ありがとうナタリア。それと心配してくれて有難う。兄さん。」
「フン!さっさと行くぞ。」
アッシュが恥ずかしそうに応える。
「待ってくださいまし、アッシュ。けがが見あたらないとはいえ少し彼女が心配ですわ。私達で送って行きませんこと?」
「そうだな。そうしよう。」
ルークが賛成する。
「ちっ。早くしろ。」
アッシュもしぶしぶ了解する。
「キミ。えーっと。」
ルークが名前を尋ねる。
「ティ、ティアです。//////」
「そっか。ティアさん。お節介かもしれないけど。もしよければキミを学校まで送らせてくれないかな?」
ルークが提案する。
いつものティアなら断るところだが思考より先に口が先に言葉を発していた。
「は、はい//」
「そう。じゃあ行こうか。俺はルーク。ルーク・フォン・ファブレ。よろしく。あっちが兄のアッシュ。こっちがナタリアだ。」
「よろしくお願いしますわ。」
「フン。よろしくな。」
「よろしくお願いします。」
次々交わされる挨拶に少し戸惑うがしっかりと返し、学校に向かった。だがその間もティアの心臓はドキドキしっぱなしだった。
そのせいで学校についた後のティアは真っ赤な林檎のようだったとか。