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□傷を知ってる【葦月】
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「とりあえず、行きましょう」

月島は俺の手から落ちたビニール袋をおもむろに玄関へ投げると鍵を閉めて俺の手を引っ張った


「…」


「…」


なんとなく、月島の様子が可笑しかった
移動するなら電車を使うのが一番だし、あの辺にはホテル街が広がってるのに
まるでそこを避けるように住宅街へと歩く


「つ…きしまっ!」


「ぁ……すいません」


無我夢中で歩く月島は焦ったように俺の腕を放した


「どこ行く気?」


「…わ「月島?」!!」


振り向いた俺たちの目線の先には
高校生時代、合宿で天才セッターとして力を伸ばしていた影山がいた
今は有名大学の選手で日本代表だ


「…と、赤葦さん?……ちはっす」


「久しぶ「王様っ!今日泊めて」月島、落ち着いて」


「は?どうした?」


「いいから早く!!」


「月島、焦らないで」


がっしりと影山の肩を掴み、揺さぶる月島
月島のポケットが震えている
電話?


「わ、分かった!分かったから離せ!!」


耐えきれなくなった影山は観念したように言った
そして月島はいつもの調子を取り戻すと影山の隣を歩き始めた


「あ、そうだ」


「何?」


「…いや、もう一人いるけど……月島、大丈夫か?」


なぜか月島に確認を取った影山
月島も知っている人なのか?


「え……まさか大王様?」


「……おぅ」


大王様?
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