story

□天才は、秀才であり、凡人である
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及川が高校生になり、3年目の夏休みが終わって早、2ヶ月
春高で打倒白鳥沢を掲げた強豪、青葉城西高校バレーボール部も日々、練習に励んでいた時だった


「あのさ」


花巻、松川がレギュラー陣で円を組んで休憩していた中、不意に口を開いた
怪訝な顔をする及川、岩泉を見て顔を見合わせた二人
今度は国見、金田一を見てから話し始めた


「悪いけど…及川には言ってない」


「まっつん!!酷すぎない?!ねぇ!!」


騒ぎだす及川にため息をついた二人は一度、岩泉を見た
コクリとうなずいた岩泉は及川の頭をガシリとつかんで座らせ、静かにさせた


「多分、お前が聞いてて楽しい話じゃねぇよ」


「は?なんでわかるのさ!エスパー?」


「一年入ってきて初の練習試合とかお前の今までのこととか含めれば大体分かる」


「俺はよく分からないんですけど!」


「…………影山の話だよ」


言いにくそうに花巻が口を開けばあからさまに及川の顔が不機嫌になる
それを分かっていた松川はやはり、このタイミングで話すべきじゃなかったと後悔しながらも口に出してしまった以上、言わない訳にはいかなかった


「影山って誰っすか」


京谷は知らない名前に首をかしげた


「及川と俺の中学の後輩だ…まぁ、天才ってやつだな」


「へぇ…」


興味がないのか、それ以上は聞いてこなかった京谷に代わって花巻が口を開く


「俺、思うわけ……北一の中でも及川と岩泉は今の1、2年にとって存在でかかったじゃん?なのになんで影山クンはウチに来なかったのかなぁって」


「ホント、花は真っ直ぐすぎ……まぁ、俺たちが言いたいのは今、花が言ったことと「あんな純情無垢な子がひねくれちゃった理由が知りたい」だから単刀直入すぎ…」


「まぁ……アイツの人生なんだからアイツが選択すればいいと思うよ、それでアイツはまともな王様になった訳だし…でも、国見ちゃんや金田一と違う道を歩むことしか選択できない道にしちゃったのは俺だね」


「及川だけじゃねぇ…あの日、影山の前での俺の発言のせいだ」


「俺が試合で影山のトス、打たなかったから」


「俺が本気を出さなかったから…」


“だから影山飛雄は王様になった”


4人は口を揃えて自らを貶し、罪を問う
過去に戻ることのできない人生で
過去に縛られ、その一時の自分を呪うのだ
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