お話

□素晴らしい日々
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様々な国の人々で賑わう
中華街、

海の上に丸い波を描きながら
走る水上ボート、

明治の面影を漂わす
赤レンガ倉庫、

ここ横浜は、
観光やカップル達の
デートスポットとしても有名

そんな所で探偵社員として
働いている太宰治も

マフィア構成員として
裏を取り仕切る
丁も

心の何処かでは
まだ一緒に居たいのだが
兎に角時間が無いし、
お互いの立場から
会うことさえままならない


太宰と丁は
数年前に同じポートマフィアで、
互いに心惹かれあい、
付き合っていたのだが、

一年が過ぎる間に自分達の周りで
太宰の理解者である
織田作が亡くなってしまったり、

其れから間もなく、
太宰が失踪してしまったり、

そして探偵社なんて所に入ったり、

勿論丁も太宰と同じように
マフィアを抜け出そうとしたのだが、

同僚である中原や、芥川に阻まれ、

敢え無く断念した、




赤茶けた古い探偵社の
ビルの屋上で、
男は一人、昔、真剣に愛した
恋人について考えていた、

「君は私を忘れるなら、
その頃になれば直ぐにでも君に
会いにいける、」

本当ならこんな事考えてちゃ
何時までも彼女を
忘れられなくなるだけなのに、

あの日あのバーで
一緒に飲み明かしながら聞いた 
なつかしい歌も
君の眩しい笑い顔も
すべて忘れて私は生きたい、

このまま君と会ってしまったら
私達は心中でもなんでもするだろう、

それじゃあ織田作に言われた
最後の言葉にそぐわないから、

それでもどうしても君を思い出せば
そんな時は何もせずに

深い眠りに就こう

朝も夜もその事を
考えないようにしながら 、
でも時々はぼんやり考えよう、

君は私と同じように私を忘れてくれる

そうすればもうすぐに
君に会いに行けるよ、


透き通った青空に向かい
震える声で彼は呟く

「こんな素晴らしい日々を
私は望むとするよ、」

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