お話

□雨のち…
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横浜のとある倉庫で
中原達ポートマフィアは、
一仕事終わらせ、
それぞれ自宅に帰っていった、
残っていたのは二人、
中原とその相棒の丁、
幹部とその相棒が最後の点検をする、
「西エリアと東エリア、南エリアはクリアです!」
広々とした空間の3分の1を
点検し終わらせた丁、
中原の手間を省くためだそう
でして…
「お前、相変わらず作業時間早ぇなぁ」
驚くを通り越して感心する、
「中原先輩のためですから!」
アイラブ先輩な丁は、
先輩の為だったら死んでも
構わないと思っている、
取りあえず二人とも外にでて、首領に報告を済ます、
中原が電話を切ったと同時に、ザァァっと雨が地上に降り注ぐ、



「「あっ、」」



ウンザリな顔をする二人、
すると見知った影が後ろからソワッと近づいた
「やぁ、」
ビックリする二人、其処には中原の天敵太宰治がいた、
「やぁ中也、元気にしてたかい?」
気安く話しかけてくる太宰に丁は
キョトンとした顔をする、
「中也!この美人さんだれ?!こんにちは!私は中原君の友達の
太宰、太宰治といいます、良かったら一緒に心中してください!」
ニコニコとした爽やか系包帯ぐるぐる好青年が早口に
挨拶して来る、っていうか心中って?!
「おい、いつだれがてめぇなんかのお友達になったって?
俺はてめぇに死んで欲しいんだ!」
中原先輩が望む死んでほしい人、

太宰、

治、

治太宰、

太宰治


「…んで…喜んで!一緒に心中しましょう!」

キラキラ光る丁の目…
唖然とする二人の男、
「丁、太宰なんざの為に死ぬ事なんてねぇ、
早くそこら辺で傘買って帰るぞ、」
手を引っ張り取りあえずその場から逃げようとする中原、
「こんな可笑しな人の為ではありません!私は中原先輩が幸せになるのなら
どの様な障害も払いのけます!」

身体を太宰の方に向け、
中原の希望を叶えようとする
「まあまあ、二人とも、
この話は後日ゆっくりするとして今はこの雨の中をどの様にして
帰るか考えようじゃない、」
落ち着かせるように言い聞かせる太宰、
「心中は?やんないんですか?」
珍しく回答に迷う太宰、
「君の死に際なんて中也に見せたくないでしょ?」

「太宰の死に際を見せる為の心中なので、
全然私は構いませんが…」
当然とでも言うように
丁は言う、

「丁、此奴は今まで
幾度もなく自殺を繰り返し、
全て自殺未遂に終わらせた、コイツの場合本当に急所でも
刺さねえかぎり無理だ、いや、急所を何度刺しても
殺せたきがしねぇような奴だ、」
中原に言われようやく諦める丁、
「取りあえず、中原先輩が濡れちゃいます、
私傘買って来ますんで待ってて下さい!」
「お、おい待て!」
中原の言葉が聞こえて無かったのか、
丁はザァザァと降りしきる雨の中に姿を消した、
「中也、彼女は…?」
未だにビックリした顔をしている太宰は
仕切りに彼女の事を聞き始めた

「てめぇには関係ねぇが、あいつは俺の今の相棒だ、
格闘はてめぇ以下だが、仕事はてめぇと違って
きっちり筋を通してこなしてる、」
めんどくさそうにしかし
どこか嬉しそうに丁の事をはなした
「んで?中也はどうなの?彼女の事どう思ってるの?」
ニヤニヤしながら中原を問い詰める太宰、
「い、いや、俺はあいつの事は仕事仲間としか…」
しどろもどろになる中原に対してますますにやける太宰、
「んじゃあ彼女は私がもらっていいんだn…」

「ダメだ、」
ハッキリキッパリ即答する、
不意に太宰が思い出したように言う
「それにしても彼女、遅くない?」
確かに傘を買って来るには遅い、
「もしかして事故に遭ったんじゃ」
悪い想像が中原の脳裏によぎる、
気付いた時にはもう足が動いていた、
ハッ、ハッ雨の中響くテンポキープされた息、
中原は、近場にある傘が売っていそうな店へ入る
丁、丁、丁…どこだ…


「中原先輩?」



声の聞こえた方へ振り向く、
「丁!お前大丈夫か?!」
慌てる中原、
「あ、はい…そんな事より中原先輩!お身体が濡れてます!」
慌ててジャケットを脱ぎ、
中原に被せ、ハンカチで中原の頭や、
肩の雨を拭う丁、
「そんな事良いからお前の方が風邪ひくだろっ…!」
中原が丁に目を向ける、
濡れて水滴がポツリポツリと落ちる黒髪、
ほんのり赤い白い雪のような肌、

そしてシャツから透けて見える下着、
思わず目を背ける、
「お、お前が珍しく遅ぇから!」

言い訳がましくも此処に来た経緯を話す、
「ぷふっ、中也ったら、むちゃくちゃ心配してたくせに!」
その太宰の言葉に対し蹴ろうとする中原
「中原先輩!お店の中です、それにそんな事したら、
靴が此奴の色んな物で汚れてしまいます!」
太宰の前に立ち、中原を止める
「…ったく、解ったよ、んでお前何にそんな時間かけてたんだよ、」

俯く丁
「中原先輩が…何でも似合ってしまうので、すみません!
どうか私をこの場で絞め殺して下さい!
中原先輩になら絞め殺されても全然大丈夫です!」
呆れる中也、床で笑いこける太宰、
「傘なんざ適当に買ってくればいいだろ、」
適当に傘を二本取り、故障してないかなど確認してから、
会計にまわし財布を手に取った筈だった、
「あ?あ?おい、太宰、てめぇ人の財布…」
先ほどまで居たはずの太宰がいない、
「まあまあ、先輩!ここは私が…」
財布を開けると残高は500円とちょっと、
「先輩!すみません今すぐATM行ってきます!」
行こうとする丁を今度こその手首を掴み、
行くのを制する
「いいから、取りあえず、500円貸してくれ、」
は中原の手のひらに500円玉を乗せる
「どうぞ、」
傘を一本元の場所へ戻し、会計を済ます、
「仕方ない、おい、入れ」
外にでて、傘をさすがなかなか入って来ない、
の手首を引っ張り引きずり込む、
「先輩…持ちます」
中原から傘を奪いさす
「おい、お前何で俺にそんなに尊敬するんだ?」
前からずっと疑問に思ってたこと、
「それは…」
目を泳がせながら、歩く、


ふと晴れて行く空、


広がる青空、



丁は傘を下ろす









「内緒です…」

中原は少し驚いた顔をしたが
    直ぐにクスッと笑った

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