お話

□my father is…
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私のお父さんの名前は福沢諭吉、

頑固で、

不器用で、

神経質な人、

私はそんなお父さんが大好きだ、

あ、

大好きっていうのはlikeの方のね、

お母さんは私を産んでからすぐに亡くなった、

今日はお父さんの働いている探偵社に、

珍しく忘れて行った私の作ったお弁当を届けに行く、

そして私はいまそのビルジングの前、

私はそれまで此処に一度も来た事が無かった、

父は仕事の事を話してくれない、

此処まで来たのは良いもののなかなか決心が出来ない、

「あの、探偵社に何かようですか?」

後ろを振り向くとひとりの青年が居た、

白い髪に面白おかしく斜めに切られた前髪、

「あ、はい!」

少年は私の荷物を持ち、

昇降機で探偵社の階まで案内してくれた、

「此処が探偵社です!」

如何にもお父さんらしい毛筆でかかれた看板、

「あの、私…」


「敦君!」

此処に来た用件を話そうと思ったら

後ろから声が聞こえた、

振り向くと其処には薄茶の外套を纏った青年が

こっちに向かってきた、

「太宰さん、またサボっていたんですか…」

ウゲェとした顔で

太宰さんと言われる外套の青年をみる敦少年、

「敦君、君こそ仕事中に女性と一緒だなんて、
私を呼ばないでどうするんだい?で?
其方の美人さんは?」

敦少年の背中をポンポン叩く太宰さん

「この方は探偵社の依頼人です、
それに太宰さんが一緒に仕事に行かないで 
また心中とか自殺とかしようとして
未遂に終わったんですよね?」


「うん、」

全く反省の色を見せない太宰さんに対し呆れる敦少年、

というよりまたって?!

「お嬢さん、此処で私達の立ち話を
聞いているのも難でしょう、
どうぞお入り下さい、」

中に入りソファーに案内され座る、

敦少年と太宰さんが席を立ち、

部屋に一人取り残される、

何故か随分新しそうなオフィス、

開かれっ放しのパソコン、

一人一人全く違う机の上や椅子、

すると突然、


ドンッ!


後ろから何者かに抑えられる、

横目でその人の顔を見るものの

私の知らない男だった、

「静かにしろ!黙らねえと殺す!」

拳銃を突き付けられ震え上がる私、

バタン!其処に丁度敦少年と太宰さんが戻ってくる、

「助けて!」

私は咄嗟に声をだす!

「おい!お前何をやっているんだ?!」

敦少年が気づくと男が舌打ちをして再び銃を突きつける

「うるせぇ!おれは此処にストーカーとか何やら
言われて人生を散々狂わされていったんだ、」

二人は近づき説得を試みる

「おい!それ以上近づくんじゃねぇぞ!
お前らの能力も素性も俺は全部しってんだからなぁ!」

太宰さんと敦少年は顔を見合わせ太宰さんが言う、

「解った、君の要求通り社長を呼ぼう、」

太宰さんは事務所の奥の

社長室の方へ向かいお父さんを呼ぶ、


ガチャ、


太宰さんが扉を開けお父さんが入ってくる、

「丁!!」

目を見開き、

私を呼ぶお父さん、

それをきいた男がニヤァっと笑う

「おい!てめぇ!俺の願いはわかるよなぁ?
ほら…此奴がどうなっても良いのか?」

銃口を見せびらかすように頭に突きつける、

その瞬間、

部屋の空気が変わった、

重苦しい恐怖心と、

殺気、



怖いよ、


お父さん、




お父さんは近づき片膝を

地面につける、



駄目、




駄目だよ!





プライドのあんなに高いお父さんが、

やだよ涙がこみ上げてくる、




…そうだ、私が何とかしなきゃ、

私は男の足を思いっきり踏みにじる、

「うぐぁ!この糞女!」

男は拳銃を私に向け構え、

撃つ、

発砲音が事務所に響き私は倒れる、

お父さんが私の名前を何度も呼ぶ、

ありゃりゃ、

血がでてるのか、


お父さんが手を血だらけにして珍しく泣いている

ああ、何か目蓋が重く…









暖かい日差し、

ふわふわと浮かぶような感覚、

私ったら幽霊になっちゃったんだ、

目を覚ますと其処は

知らない部屋のベッドの上だった、

そしてそのベッドの横に寝ているのは


「お父さん、」


何日も寝ていないらしい、

目のしたに真っ黒な隈が出来ている、

またお父さんの事が見れただけで色々な物が溢れかえる、

ふと、目を覚ましたお父さん、

「丁!!もう大丈夫なのか?!」

心配そうに眉を歪めるお父さん

「大丈夫だよ、頑丈なお父さんの子なんだから」

ああ、駄目だ涙が溢れて来ちゃうよ、

「お父さん、私、私、本当に怖かったよぉ!死んじゃうんじゃないかって、怖かったよぉ!」

ベッドで号泣する


「丁済まない、」

と何度もお父さんは

私を抱きしめ、

誤った、


「もう二度とあんな事するな、」

その後太宰さんや敦少年が病室に来て

その後の事を話してくれた、

「いやぁ、丁さんが撃たれたときは
本当に驚きましたけど、それよりいつも冷静な社長が
犯人を10分の9殺しぐらいまで
したほうが驚きです、」

犯人をどこか気の毒に思いながらふと、

思い出した、

自分の小さい頃の記憶、



道に迷った私を見つけてくれたお父さん、


帰りにむちゃくちゃ叱られて怖かったなぁ、


でも、あの時や、

今回のお父さんの




安心した優しい顔を忘れることは



ない。

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