お話

□深海少女
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灰色のコントラストに
白くむせあがる熱い蒸気、

奥に進んでいくたびに暗くなっていく、


「はぁっ!はぁっ!」


腹を赤黒く染めた少女は
一人想った



「ああ、まだあいつに最後に一言に言ってなかったな、」




ぽっかり穴の空いた腹から
血液や臓器が出てくる、


「ぐはっ、」


少女は目瞑り上を向く、

ポツリ、


雨が頬にかかる、

もう目を開けるのも億劫になってきた、

まあ、このまま誰にも見つけられず死んでいくのが落ちかな?

ああ、ようやく皆の所に行けるよ、

大切なあの子達、

一人一人の顔が私の脳裏に浮かぶ、

どの子も私に可愛いらしい笑顔をみせる、

いよいよ本格的に寒くなってきた、









1ヶ月半前、

私達は孤児院から追い出された、

原因は同じ孤児院にいる

中島敦とか云うやつらしい、 

私は、兎に角彼を恨んだ、

私は私一人が孤児院から

追い出される分には構わない、



一人でも生きていけるから、



ただ今回は私より幼い子もいる、

まあそこそこ歳の高い子で、

街の人の財布を盗むしかない、

人々が街を行き交い

また色々な話も街を行き交う、

そんな中私は歩いていた

二人の男の会話を聞いていた、

「最近あの探偵社に中島敦とかいう
危ない異能を持った少年がはいってきたみたいだぜ、
でも、その中島敦とかいう奴、裏では
七十億の懸賞金がかかっているらしいなぁ、」

私は驚いた、

私達をこんな目に会わせた張本人が

職場で働き、

しかも、

懸賞金が掛かっているだなんて、

私は考えた、


彼を売り飛ばし、


皆で幸せになる、

七十億もあれば皆で

一緒に楽しく暮らすことが出来る、

私は今あるお金で、

洋服を買い、

髪をセットし、

色々なものを買い、

探偵社に行った


「あのぉ、私此方へ依頼をしに
来たんですけど」

フロントにいた麦藁帽子の男の子に声をかけた、 

「え、あ!はい!
此方へどうぞ!」

麦藁帽子の男の子に連れられ

中へ入りソファーへ腰掛ける、

「あ、あのぉ、私此処の
中島敦君とかって言う男の子が
大変優秀だと伺ったので、
お願いしたいのですが…」

営業スマイルで男の子に

出来るだけ自然に心願する、

「あ、敦君は今仕事に出てて…」


「美しい…」

「うわぁ!」

いつの間にかに私の隣に来て

私の手のひらを握っていたのは、

何やら薄茶の外套を着て、

いろんなところに包帯を巻いている青年、

「あれ?太宰さんが居るって事は、
敦君帰ってきてますか?」

当たりを見渡す麦藁帽子の男の子、

その間太宰さんと云う人が

私を冷たい冷酷な目で見てきたような気がした、

「お嬢さん!敦君は今奥で
書類をまとめているのでね、
彼が来るまでに一度
依頼内容を聞かせてくれたまえ、」

依頼内容は考えてあった

「最近誰かにつけられてるような気がして、
いや、もしかしたら
私の意識が過剰なのかもしれませんが…
万が一の為に此処の探偵社の
優秀な中島敦君にお願いしようかと…」


私はバレないように表情を変えながら、言った

「ほう、確かにこんな美人さんの後をつけたくなる
犯人の気持ちも、解らなくないねぇ、」

その時、
麦藁帽子の男の子が一人の青年を連れてきた、

「この人が中島敦君ですよ!敦君、
君に依頼があるんだって!」

白い髪に面白おかしく斜めに切られた前髪、

どこかアンバランスな服装、

「あ。どうもこんにちは、
中島敦と言います、」

恐縮したように挨拶する中島敦、

「とりあえず今日は敦君と 
1日貴方と一緒に行動する形で
良いですか?」

いいなぁーいいなぁと叫ぶ
精神年齢5歳以下のような太宰さんを
無視して私は頷く

「あの、すみません、私この後
どうしても遅れちゃいけない用事が
ありますのでまた今度料金の方を
お支払い致しますので、
宜しくお願いします。」

適当な住所と電話番号を書き、机におく、

「ではまた今度、」

まあ、もう一緒会うことは無いでしょうけど、

とりあえず中島敦と二人きりになる
チャンスは作れた、

私は適当な喫茶店で誰かと

待ち合わせたフリをする、

「もう、15分も待っているのに、
何かあったのかしら」

白々しくも呟き、外を伺う

「後5分待って来なかったら出ましょう、
何らかの手違いでしょう、」

それから5分経った、

もちろん待ち合わせの相手なんて来ないので、

私達は外に出た、

当たりはすっかりオレンジ一色だった、

「すみません、お手数おかけしてしまって、」

中島敦の前を歩きながら謝罪した、

「まあまあ、大丈夫ですよ!
それより…すみません、僕、
前に貴方とどこかで会いましたか?」

ふと足音が止まる

「いいえ?何故ですか?」

内心気付かれたと思いヒヤヒヤしている、

「いやぁ、何か前にも会った
気がするんですよね、まあ、
気のせいですよ!」

その後も少し警戒したが、

彼は私に気づいていないようだった、

慣れないヒールの高めの靴で階段を降りる、


バリッ、


ヒールが靴から取れ転けてしまった、

「大丈夫ですか?!」


慌てて私に駆け寄る中島敦、

私に怪我が無いことを確認すると、

靴を脱がし此方に背中を向けた

「どうぞ、乗って下さい、」

此処で断るのも可笑しいと想い、

言葉に甘え乗せてもらった、

彼は夕日のように暖かく、

とても気持ちよかった、

そんな事を意識してしまい、

顔を真っ赤にさせながら、

彼女は予約しておいた

ビジネスホテルに向かわせた、

ガチャッ念のために鍵を閉める

「良かったら、
ご一緒にお食事いたしませんか?
一人で食べるより二人で食べたほうが、
おいしいですし!」

わざわざ断れないようにフロントに
二人前の食事を用意させるように、
彼の前で電話をした、

「じゃぁ、お言葉に甘えて、
すみません、」

食事が来て私は睡眠薬を料理に入れる


「「いただきます」」



ひさびさに食べた美味しい料理

「おいしいですね!」

リスのようにほおばり食べる…

不覚にも可愛いと思ってしまった

「すみません、こんなときに何ですけど
僕貴方の名前を知らないのですが…」

そういえば…どうしようか、

「丁、です、そういえば、
中島さんは探偵社にいるということは
何か異能をお持ちになっているのですよね?」

思わず本名と不必要な質問をしてしまった、

今更取り消す事も出来ないので解答を待つ、

「僕の異能は月下獣といって体の一部分や、
全身を白虎に変える能力なんですけど、
僕は昔この異能の存在を自分では
知らなくてさ、
住んでいた孤児院には迷惑ばかりかけていたんだ、
太宰さんって
あの薄茶の外套の人に拾われて、
色々な人に会って知って、ただ、
まだ後悔していることが有って
孤児院から追い出された
他の子にまだ謝ってな…ぃ…」

私は眠りについた彼の頭に
手を乗せ撫でる

「そんな事を思ってくれてたなんてありがとう。
貴方が誤りたいと言うのなら
私達の幸せの為の犠牲になって、」

狂気的な笑みを彼女は浮かべた、


トランクケースにきつく縛った
中島敦をいれる、

今回の依頼相手に電話を掛ける、

電話のコールの音が耳元で響く

「もしもし、こちらお客様お預かりセンターです、」

「中島敦様からのお手紙をいただきたいのですが、」

出てきたのはかしこまった
セールスマンのような声の男

「…かしこまりました少々お待ち下さい…」

再び鳴るコールの音

「もしもし、君かい?白虎を捕獲したのは、」

今度出てきたのは
何やら喋り口からして
権力者のような男の声

「はい、丁と言います」

淡々と自己紹介する、

「君、女性かい?しかもまだ若い、
10代位ではないのかね?」

少し驚いた声で問いかける言葉に

私は明るい声で答える

「はい、彼には恨みがあったので
ちょうどよかったです、」

何事もないかのように
相手には見えない歪みきった笑顔で
話を続ける

「まあ、とりあえず交渉と行こうではないか、
場所は横浜港2番倉庫としよう、
今白虎は?」

私は眠りついている物を横目に呟く

「眠らせて居ます」

「わかった、直ぐに組員に取りに来させよう、
金は現金で構わないな?」

其れは最も好都合、

「はい、失礼します、」








静まり返った港、

繁華街とは違いどこか心が踊る、

コツコツと私の以外の靴音が

倉庫に響く、

黒い外套の男が私に近づく、

「か?」

私の前で止まりギョロッとした目で
私を見る、思わず足がすくみ後ろに一歩さがる、

「ええ、」

黒い外套の男は辺りを見渡す、

「人虎は?」

「トランクケースの中に押し込んであります、」






この時私は、どこか気を許していたのかも知れない、




「了解した」

さっそく交渉に移ろうとした、
私は七十億の現金が
自分の手に入れる姿を浮かべた、


私は其処でようやく気が付いた、

「お金は?」

男は黒い気をはなちながら私を真っ直ぐ見つめる

「…」


こいつ…

最初から金を渡す気なんてないのか!


「お金が無いのなら交渉は決裂よっ!ぐはっ!」

私の胸に黒い柱のような物が突き刺さる

「羅生門」

黒い外套の男は黒い物体を操り
トランクケースを奪おうとする、



バキッ、



トランクケースが割れ、
白い物が床に落下する

「?!」

少年は辺りを見渡し絶望した顔をする、

「!どうしてこんな事に?!」

黒い外套の男は少年に近づく、

「全ては貴様のせいだ人虎、この女と、
その他の童共は孤児院から貴様のせいで
追い出されたことを恨み、
このようなことをしたのだぞ、
それを知らぬと言うのか、
しかしちょうどその童共が
僕らの仕事の差し支えになったのでな…」

彼はもう、一生笑う事の無い
冷たく白い3つの生首を
床にぽとりと落とす、

「なっ!秀一、早苗、拓真」

ああ、可愛らしい私の坊や達なんで?
どうして?

殺され殺そう殺す殺せ殺さない殺し殺して殺します殺したら殺しゃあ殺しても殺しては?殺せ殺せよ殺せど殺せそうだ殺せども殺せました殺せといった殺せまし殺せ殺せという殺せました殺せず殺せよ
ぁぁぁぁあああああ!!!

頭が色んな文字で埋まり尽くす

「ぁぁあああああ!!!うわぁ!!ぐはっ!」

ビチャビチャッ!

バタッ

痛みを忘れ叫び泣き狂い吐血し、倒れる

「芥川!お前ぇ!」

敦が殴る相手、

ポートマフィアの芥川龍之介が
いきなりの攻撃を受ける

「っく!」 

芥川は直ぐに体制を取り直し
羅生門を出す、

「はい!そこまで!」

「太宰さん…」

間に入り二人の闘いをとめる
太宰、

「っつ…」

仕方なしげにその場を後にする芥川、

取りあえず彼に近づき安否を問う、

「敦君大丈夫かい?」

中島は珍しく無傷だった、

「…っつ!はい、それより彼女は、」

しんと静まり返った倉庫には、
3つの生首と、
引きずった血の後が残っていた



時雨降りしきる路地裏

彼女は一人願う

「ああ、まだ最後に一言あいつに言ってなかったな…」

雫が彼女の頬を伝い落ちようとする、




    ○○○○








横浜の広い町を雨の中駆け抜ける少年、彼もまた祈る

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