お話

□白い雪のプリンスは
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カチカチとテンポよく
時計の音が響くオフィスで

私はとある女性を食事に
誘っていた、

「国木田さんとなら…///」

大胆に本人の前で
言っておきながら照れ隠しに
目線をそらす、
一方の国木田君は急な誘いに
動揺しまくっているが
内心は嬉しいのだろう、
彼女と同じように
目線をそらしている、



知っていた、


知りたくなかったが
わかっていた、

わかりたくなかった、


彼女は国木田君を愛してる、

国木田君も彼女を愛してる、

そして

彼女は私を内心相当

嫌っている、

そんな事実を改めて

頭の中で整理しているうちに

彼女達は
予定が決まったらしい、

幸せそうな彼女たちを見送る


さっきまで彼女達の声で
色づいていた部屋が
見る見るうちにモノクロに
なっていく、

モノクロの部屋で私は
意味もなく読みかけの書物を
手に取り

読む、


フリをする

モノクロの世界で

書物の文字がだんだん

消えてゆき

白い生地だけが浮かぶ、

そして白い生地の中で
楽しそうに食事をする
彼女達が型どられ
クッキリと見える、

私の心からドロッとした
何かが溢れ返る、
私はこの感情を知っている…
これをなんと言っただろうか、

私は本を閉じ、
オフィスから繁華街に出る、
スマホを取り出し、
ある子にかける、

五月蠅い繁華街をこえた港は

まるで大きな深く
黒い生き物に見えた、
時々遠くから
波の音が聞こえるが
それ以外は至って静かだった、
発信ボタンを押し
コール音に耳を傾ける

「…」

コール音が止んだものの

出て来ない、

相手が誰だか探って居るのか、

「やぁ私だよ」

とりあえず話をしないことには
何も始まらない、

「貴方の方から連絡なんて
かけていただけるなんて
珍しいですね、」

調子がいいのかいつもより
些か優しい口調だ
電話越しに銃声が響く

「忙しかったかい?
彼女について
良い情報があるのだけれど…」

銃声が止む

「…構いません、片づきました」

「いやね、今日君の
気になっている彼女が
ウチの社員の国木田君の家で
2人っきりで食事をするらしいよ、
何でも彼女の手料理だとか…」

プツッ電話がきれ、
再び静寂が訪れる、
そんな世界で男は一人ほくそ笑む

「君が、君が悪いのだよ?こんなにも愛しているのに
殺したいほど愛しているのに…」

この男が言っているのは
180度回転した、
もしくは狂いに狂った愛、

そうだ、

さっき彼の心から溢れ出ていたもの…

それは…


翌朝探偵社は予想通り大騒ぎだった、
特に国木田君は、
自分に相当責任を感じているらしい、
それはそうだ、
自分が食事を作ってもらった後に
彼女が消えたのだ、
気が緩んでいたでは済まされない、
まあ、大方そんな心中だろう、
   
乱歩さんは運良く海外へ出張中で
3ヶ月は戻って来ないだろう、そしてこれは3ヶ月以内に
片が付くと察していた、
まあ、大体で言うと
今日中にでも芥川君が
彼女を攫ったことはわかるだろう、
予想通り彼女と国木田君の家の
道のりの間にある防犯カメラには
芥川君と抱きかかえられている彼女が
鮮明に映っていた、

私は思っていた、

此処で彼は諦める、
このまま捜索していたら
いずれは芥川君に
遭遇する事になるのだから、

そう思っていた、

しかし、止めるどころか
熱が入っているようだった、
彼の彼女に対する愛は
私が予想しているよりも
ずっと深かった、

嗚呼。

それはなんて甘美で。








汚らしいことなのでしょう?





私は頭をフル回転させて考える、
この後もし彼女が、
彼によって助け出されたら、
彼女は彼の物に…

先に私が助けだすか…

いやリスクが予想より大きくなる可能性が高い…











x「そこで太宰は思いついちゃったんだよ

彼…国木田を殺せばいいんだと、」




xはこの事件を最も知る人、

xは深緑の使い古された
手帳の上に手を乗せ撫でる、



遡ること一週間前…
彼女が攫われ早、
2ヶ月が経とうとしていた、


しかし、
彼らは決して彼女の行方が
分からないわけでもなかった、
偶然一時間前に匿名であるものの
彼女らしき人を見かけたと
探偵社に証言が届けられた
すぐにも国木田は行こうとしたが
太宰がどこにも見当たらなかった
ちょうど探偵社の全員が依頼でかりだされており、
いつまた彼女が移動するかも解らない事から
一人で乗り込む事にした、
手帳から幾つか銃を作り出しておく、
ドクン一回なるごとの心臓の音が
五月蝿く響く

バタン!

階段をのぼり錆びた鉄のドアを蹴破る、


一瞬呆気にとられた


其処には外からは考えられないほど
真っ白な空間が広がっていた、
そしてその真っ白な空間には
2人の人間がいた、
正しくは国木田を含めれば三人で
内一人は横になったまま目を開かず、
倒れている彼女、そして「やぁ」居るはずの無い太宰、

「おい、貴様何故こんな所に…ぐはっ!」

響く銃声、

真っ赤に染まる国木田の腹部と部屋の床、

カツ…カツ…太宰がゆっくり国木田に近づく、

まずい、

視界が…暗く…


「君の代わりに可愛い彼女を大切に
するよ、」

コイツ…何を…
すまない丁…

逃げてくれ…


丁side

真っ暗な闇に
一輪だけ花が咲いていたんだ、

とても綺麗な花、


繊細で真っ直ぐで
あの人みたいな…



あれ?


…あの人って誰だっけ?

…あれ?なんでだろう涙が…


助けて…







助けて!!○○○○!!

花が枯れていく



赤く染まりながら、

やだヤダヤダヤダヤダヤダ
ヤダヤダヤ 
ダヤダヤダヤダヤダヤダヤ
ダヤダヤダヤ
ダヤダヤダヤダヤダヤダヤ
ダヤダヤダヤ
ダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤ
ダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤ
ダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤ
ダヤダヤダヤダヤダヤダ


起きた私の隣には
大きな百合の花が花瓶に一輪刺さっていた、
そこは先程私が監禁された真っ白な部屋だった、
しかし、決定的な違いがあった、

「国木田さぁあん!!」

国木田さんが倒れていた、


私は重い身体を動かし

ようやく国木田さんの元に近づいた、

手で冷たくなった国木田さんの頬をなで、キスをする、

お願いキスで目を覚まして,

儚い願いを込め、

彼女は願った、

「目覚めたかい?」

後ろから声が掛かり振り向く

「太宰さん…」

真っ直ぐな目で私を見る太宰さん

「君が、彼を殺した、」

は?


「何を言って?」



太宰さんは相変わらず

真っ直ぐとした目で此方を見る、

「実際に殺したのは君で無くとも、
殺される原因を作ったのは君自身なのだよ、」
 

目の前が真っ暗になっていく、

私のせいで国木田さんが殺された、

私が愛したから、

ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!

「私は…どうすれば良いのでしょうか?」

そう、これこそが彼の目的、
愛など最初から無くてもよかったのだ、
愛は後からいくらでも付け足せる
彼女が自分の物になる、それが彼の目的、
そして彼女が彼の物になるきっかけとなった物語、
僕は今彼女たちがどうなっているかも

知っている、

けどあんまり話をすると僕が疲れるからね、


んじゃあ今日はこの辺で…

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