お話

□to loved ones
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轟々と雨が降りしきる夕明け

赤レンガのビルジングの前で
彼女はそっと呟く

「敦…

国木田、

与謝野、

賢治、

谷崎、

ナオミちゃん、

泉さん、

乱歩、

福沢さん…

太宰…」


私の前に現れる黒い陰

「別れの挨拶はすんだか?
貴様のような醜い奴の最後など
誰も聞きたく無いだろうがな、」

雨は私の髪にこびりつき

下の方に垂れ頬をつたう、

腕にピタリと張り付き
段々と生暖かくなってゆく、

「はい、そう思ったため
挨拶はしておりません、
こんな私を待って頂き
誠にありがとうございました、
傘をお持ちします」

そう言って傘を持とうとする丁を黒い陰、
芥川は跳ね返す

「貴様などが僕の側によるな、

汚らわしい、行くぞ」

これから行くのは
この世の最果て、

最も黒く塗りつぶされた
見るも悲惨な物々、

彼女は生まれてこのかた
其処に行く運命だった、
どう逃れようとしても、
無駄に終わった、

彼女はある人から
光を見せられた、
そこは探偵社という
個性的な人が揃っていた、

彼女は運命から逃れながら
与えられた仕事を真っ当した、
一方運命は探偵社の人を
巻き込んだ、


彼女は気が付いた、

自分は此処にいては
いけない存在なのだと、

彼女の存在について
知っていた太宰は

「大丈夫だよ、」

と支えてくれたものの



本当だろうか?




彼は私の事を
毛嫌いしているのでは
ないだろうか、

「貴様は周囲の物を不幸にする
この汚物めが」

芥川に言われた言葉が
突き刺さる彼は運命の案内人、

私は彼についていった、

自分の意志など

とうの昔に捨てていた、


「こんな会社、給料も低いし
変な人ばっかだし、
もうやめます!」

精一杯の悪口を並べ会社を出る、


本当にごめんなさい…















私はもう楽しかったあの頃には戻れない

けど、

今でも今更でも

私はあの人達をあの場所を愛してる、




本当にありがとう、

ごめんなさい、

こんな醜い私だったけれど

色んな事を教えてくれた!

一緒に色んな事をした!

時々喧嘩したり大変だったけれど


私にとって大切な瞬間瞬間だった、

最後まで皆と一緒にいたかったよ…





愛する人々へこの思いを届けたい

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