今日は何の日?(小説)

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会社での残業が終わり、
春風そよぐ夜道を
一人虚しさに駆られながら
そそくさと歩く、

目の前を歩く麦わら帽子の
透き通った可愛い少年の目に
何気なく見とれる、

その時…

「ぐはっ!」

情けない声を出しながら
階段を綺麗に転げ落ちる、


何やってんだ私、


街灯に照らされ
一瞬ぼーっとする、

「あのぉ、大丈夫ですか?」

後ろから声をかけて来たのは
先程私が見とれていた少年、

透き通った可愛い目で
此方を見てくる、

「だ、大丈夫です!」

立ち上がろうと左足を立てると
激痛がはしった

「はぅっ!」

またしても変な声を出してしまう、
少年が私の足をそっと見る、

「少し捻っているみたいですね、
家お近くですか?」

「い、いえ、電車に乗って一時間
といった所ですけど…」

少し彼は悩んだ後、
閃いたように私に告げる

「じゃあ僕の家に一晩泊まっては
どうでしょう?」

突然の提案に私は戸惑う

「え?いや、あなたの親子さんに
迷惑になるんじゃ…」

「そこらへんは大丈夫です!
僕こう見えても一人暮らしで、
仕事をしているので!」

えっ?!こんな少年が?!

「いや、でもこんな怪我じゃ…」

ひょいっと持ち上げられる、
自分より年下の少年に持ち上げられ、
頭が混乱する

「大丈夫です、僕の職場異能探偵社では
人の助けになるのが仕事で、
僕は『雨ニモ負ケズ』という
お腹がすいた時だけ怪力を使える
という異能をもっているんです、」

訳を聞いて少し安心するものの、
やはり年下の少年に
お、お姫さま抱っこみたいなことを
されるのは…

「つきました!」

そういってついたのはアパート
鍵を開けドアノブを捻る
中はとても整頓された部屋だった、

廊下に置かれた段ボールの中には
新鮮そうな大根や白菜が入っていた、
だんだん中に入っていく
1LDKの広々とした部屋だった、
カーテンには洗濯物の代わりに
大根や柿が干してあり
どこか田舎を想わせた、

ふと
音楽が部屋に鳴り響く、
ゆったりとしたクラッシック、
私は音のするほうへ足を運んだ
部屋をあけると
そこは少し他の部屋と不陰気が違う
書斎だった、

山積みとなった机の上には
大きなベルの蓄音機が置かれていた、
輝く金色の朝顔からは絶え間なく
音が流れていた、

「この蓄音機僕が村から出て
都会にくるとき貰ったものなんです、」

後ろから急にかかった声に
一瞬ビクリとしたが、
先程の少年だと理解すると
頬を緩ませ少年の方をそっと向いた、

「この音楽、心が和みます、
毎日聞きたいです」

日々降りかかる
仕事の疲れをほぐしてくれる、
それほど私にとって
この音楽は癒やしになった、
というより蓄音機で
聞くからなのかも知れない

「じゃあ、毎日聞きに来ますか?」

上目使いで私の心を貫くこの子は
私にとって天使以外の
何者でもなくって、

「是非、でも毎回あなたにお世話に
なるわけにはいきませんから、
いつか今回のお礼もかねて
私のお家にも来て下さいね、
そう言えば私、あなたの名前を
まだ聞いていませんでしたね、
私の名前は丁、
あなたは?」

目を見開きニッコリとした

笑顔で少年は言う

「僕の名前は、宮沢賢治、
よろしくね、」

彼からはそれから

色々な事を教えてもらった、


彼に進められ探偵社に入ることに
なったのはまた別の話…








蓄音機の日でした!

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