今日は何の日?(小説)

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暑くもなく、寒くもなく、
どちらかというと涼やかな天気の中、

私服姿の芥川と丁は
街を歩いていた、
芥川の顔は怒っているわけではない、

しかし、丁は芥川の表情に
違和感を覚えていた、
穏やかすぎる、
笑っているわけではないが、
それが逆に怖いのである、
それ以前にまず何故こんな所を

二人で歩いているのか、
今から約一時間前…任務が終わり
芥川と丁の二人で
首領への報告が終わって、
今後の仕事などを首領から聞き終わり部屋から出ようとする、

すると、

「リンタロウのバカ!
今日は可愛いぬいぐるみ
一緒に買いに行ってくれるって
言ってたのに!」

脇の部屋から金髪の少女が入ってくる、

「エ、エリスちゃん!それはその…
色々あって忙しくって!ごめんよぉ!
この後も手が空かなくって」

先程までの首領の威厳は何処へやら、

「エリスとぬいぐるみ
一緒に買いに行って
くれないんだったら、エリス、
もう一生リンタロウと口聞かない!」

なかなかやるな、エリスちゃん、
首領の方はもうしどろもどろになって、
目が此方に向き、
先程の少し薄暗いふいんきに戻す、

「芥川君、丁君、
二人に仕事を頼みたい、」

よもや…

慌てて目線をそらすものの、

「エリスちゃんと一緒に縫いぐるみを
買ってきてくれたまえ、」

今更かっこつけて言っても、
もう遅いですよ、

「お嬢のお人形、私一人で
買いにいっても宜しいでしょうか、」

とにかく芥川にお人形を買わせるという、
何ともファンシーな事はさせるまい、
何とか獅子奮迅するものの、

「いや、芥川君も行かないと多分
大変な事になるよ、」

それから一時間後、

今に至る、

「あ!エリスあそこで
ぬいぐるみ買いたい!」

指差すショッピングセンターの奥先には    
まさしくファンタジーな人形屋、
こんな所に芥川がはいるなんて…

「芥川、ちょっとここで待ってて、
私エリス嬢と此処で買い物してくる!」

先に入ろうとするエリス嬢を追うため、

芥川を人形屋の近くにある喫茶店で
待つように言う

「僕なぞ必要無いと申すか?」

何故にそうなる…空回りな芥川の言葉に 
唖然とする丁、

「いや、そういう意味で言ったんじゃ…」

先程とはうって変わって怖い顔をする、
何なんだこの人今日はなんだか可笑しい、
そんな事を思いながら

「兎に角!待ってて!」

そういってエリス嬢を追いかける、
というよりエリス嬢、
お淑やかに見えて以外と早い!

「エリス嬢…!ま、待って下さい!
早いです!」

「貴様が遅いのだ、」

そうですよね、
運動会のリレー6位以上取れた事
ないですもん…じゃなくて!
 
「芥川?!何故ここに?!」

先程入り口に置いてきたはず、

「貴様だけでは心もとない、
僕もついていく、それに」

続きの言葉は雑音にかき消された、

「え?何ていった?」

後ろを振り向き
 
「エリス嬢を見失うぞ、
さっさと走れ、」

話を濁されたような気もしたが、
今は任務中だ、
エリスを見つけ駆け寄る、

「丁!あれとって!」

と元気良く指差す先は
大きな黒猫のお人形、
取ろうと手を伸ばすが
後少しの所で取れない、
腕を伸ばしているためシャツが捲れ、
寒いエアコンの効いた室内に
さらけ出される、

「羅生門」

聞こえた後に大きな黒猫の人形に
黒い影が伸び、
捕まる、
それはやがて宙に浮かび
エリス嬢の腕に落ちる

「芥川…」

やっぱり居てくれて助かった、
と思うと同時に、
自分の無力さに泣く、

「おい、貴様は
高いところにある物を取るな、
目に毒だ」

芥川の言いように
顔を真っ赤にする、

「すまない!はしたない物を!」

そういう意味で言ったのではない
という言葉は芥川の心にしまわれた、

「あ!芥川!次あれ取って!
あれも欲しい!」

と言って指差したのは
さっきの黒猫のぬいぐるみの
3倍位ある鹿のぬいぐるみ、

「エリス嬢?!まだ買われるのですか?」

焦る丁、

「だって今日はリンタロウ
一緒に来てくんなかったんだもん」

首領、何で二人も必要か
何となく理解しました、

人形屋を後にし、
後は帰るだけだと思っていた頃

「丁って、
いつもそんな格好なの?」

そう言われて自分の服装を見直す、

ジーンズに
黒いヒール10センチのブーツ、
タンクトップのシャツ、
そして少し長めの緩いパーカー、
私服はいつもこんな感じだ
 
「いつもスーツだから
気づかなかったけど、雑だね、」

エリス嬢に言われ傷つく、

「じゃあ、今から行こっか?」

エリス嬢にどこに行くのか
聞かずのうちについたのは
私には敷居の高い
ブランドの洋服屋、

「丁、貴方の服選ぶわよ!」

と言って無理やり入る、
その間芥川に助けを求めようと探すと、
エリス嬢と一緒に服を選んでいた、  

「芥川?!なにやってんの?!」

少し嬉しそうに服を選んでいた芥川の顔が
少し険しくなる
 
「僕が選んでは駄目なのか?」

なに?!その反則技!
丁は
芥川のレアなデレ言葉に負けた、

「あ、いやそういう訳じゃ、」

「では、これを着ろ、」

ほいと手渡されたのは
真っ黒なワンピース、

「え?私こんなの着たことな…」

「なんだ?僕に着せてほしいのか?」

結構です、と即答し試着室に入って
着てみたのは良いものの、
後ろのチャックが上げられない、

「どうかしたのか?」

チャックを閉めようと
ドタバタという音に心配した芥川、

「あ、あの、背中のチャックが
届かなくって、」

取りあえず現状報告をする、

「取りあえず一度出て来い、
チャックなら僕が閉めてやる、」

そう言われ試着室か出てくる、
芥川にチャックを閉めて貰い、
改めて鏡を見る、

「綺麗な物だな、」 

そう言われ納得する、

「けど、服を着る時、誰か居ないと
着れないからね、おしいなぁ」

そう言って元の服に戻そうとする、

「僕が、」

パシッと腕を掴まれる、

「僕が、着せる」

芥川の顔を見る、

耳まで真っ赤になっている芥川に
連れられ赤くなる丁、
 
「お客様…お決まりでしょうか?」

店員に声をかけられ、 
慌てて腕を放す芥川、

「これを、着て帰りたい、」
 
話を着々と進める芥川に唖然とする丁、

「奥様にぴったりですものね?」

などと言って会計を進める店員に 改めて顔を真っ赤にする二人、

結局芥川が支払って
ショッピングセンターを後にした、

「あの、芥川、ありがとう」

「僕は何もしていない、」

話題を変えようと丁は
芥川の言葉を思い出す、

「あの時何ていったの?」

芥川は少し考えてから思い出したらしい、

「僕は家族や、
大切な者などは創っても
直ぐ壊てしまった、
けど、
久々に人と触れる楽しさを思い出した、
だからその…
できるだけ一緒にいたいから、
僕を置いてくな、と…」

芥川の告白に私は顔を真っ赤に染め、

「そんな捨て犬みたいな顔をするな、
私も置いてくなよ、」

とだけ言った、 

たまには平和ぼけするのも
良いかもしれない、


平和の日!
70年前の悲惨な事、

広島、長崎の皆さまにご冥福と、

未来永劫をお祈り申し上げます

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