今日は何の日?(小説)

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つい二日三日前まで
かんかん日照りばかりの日だった
というのにどうしたことだろう、

日中は風は冷たくも日差しが暖かく、

しかし、

夜更けになると寒さばかり感じる、

今朝方ちらりとみた
ニュースの天気予報では
二日前と今日の気温差が大きいほど
人間の体感温度は
低く感じるとかかんとか、

兎に角寒い、

家に帰ってカレーが食べたい、

自宅まで後角を一つ曲がるだけ
と足早に進む、
角を曲がると其処には人がいた、

しかも知り合い、

もう少し詳しく述べると太宰治、

更にもう少し詳しく述べると花束を
此方にたむけ跪いた太宰治、

少しぎょっとして冷静に声をかける

「どうした?」

太宰がニコッとした笑顔を此方に向ける

「ハッピーバースデー織田作?」

ぶりっこのようにウインクをして
再び花束をたむける太宰に
再び唖然とする、

無反応な俺に痺れを切らしたのか 
太宰が
「君に素敵なプレゼントを用意したのだよ!」
そういって俺の手をつかみ引っ張る、
俺は引っ張られるまま連れられた、
連れられた先は俺の家の玄関、

太宰がドアノブに手を掛け回す

カチャ、

パン!クラッカーの音と共に

紙の紐がとびたす、

「織田作!誕生日おめでとう。」

真っ赤なかおで出迎えてくれたのは
同僚である丁

白セーターにジーンズ
その上に真紅のエプロンと
シンプルな恰好だった、

「あ、お帰りも言い忘れてた、」

と言って俺の荷物と外套を預かる、

リビングへ入ろうとドアを開けると、

「カレー?」

部屋中にカレーの匂いが漂っていた、

「いやぁ、ただのカレーじゃあないよ!」

といって、太宰が食卓にある土鍋を
開けると、

「じゃーん!カレー鍋でーす!」

太宰は大分ノリノリだ

「織田作、もしかして今日カレーとか
鍋とか嫌だった?」

具材を台所からもってきながら
不安そうに問う丁、

「いや、とてもうれしい、」

微笑むように笑う織田作に
少し照れた

「よ、良かったよ、」

という丁、

「さあさあ二人共!
いちゃついてないで食べよう!」

そそくさと箸と皿を持ち、
突っ込みどころ満載な発言をする太宰に

「はいはい」

と言って早速食事を初める

「今日は珍味から定番!
魚介類から肉類まで沢山あるからね!」

と、とても3人では
食べきれなさそうな量の具材が並ぶ、

最近の仕事の話から
お互いの誕生日の思い出話まで、

とても楽しい食事を過ごした、

最後の方にはワインから焼酎、
ウイスキー、
ウォッカなどのお酒も入り

特に織田作と丁は何時も以上に酔っていた、

「じゃあ私はこの辺で、」

と太宰が間を見計らったように席をたつ、

「織田作、ここからが私からの
本当のプレゼントなんだから
後は君次第だよ?」

そういって玄関をでる太宰、
太宰が帰った後も二人は話を続けた、

二人で記念にと写真をとることになった、

「よっし、」

カメラをタイマーに切り替え

シャッターを丁が押す、

「3!2!1!」

カシャッ!

瞬間丁が織田作に接物をする、

「あ、」

目を見開く織田作に丁は言う

「織田作誕生日おめでとう。」

彼女の顔は抱きつかれているため
よく見えない、

彼女がバランスを崩し、

二人共ソファーに落ちると、
織田作が押し倒したような体勢になる、
正常に頭が働かない、
ただ黙々と愛おしい相手を見つめる、
彼女が話を切り出す、

「誕生日プレゼントなにが良いか
わかんなかった、ごめん、私、
織田作の好きなもの知らない、
好きな事知らない、
なのに好きになってごめん、」

彼女の顔は涙で濡れていた、

「誕生日プレゼントか、じゃあ、
俺の嫁になってくれ、
お前が俺の好きなものを知らないように、
俺もお前の好きなものを知らない、
だが俺はお前が好きだ。
お前はおっちょこちょいで、
可愛くって、」

「織田作はいつも冷静で」

「我慢強くって、」

「何でもできて」

「頑張りやで」

「意外とロマンチストで」

「明るい女性だ、」

「カッコいい男性、」

「お前の事は
まだこれだけしか知らない、
けどこれから知ることができる」

だから

と消え行きそうな声に
目頭が熱くなる、

「勿論、此方こそよろしくお願いします」




こうして私たちは結婚した、2ヶ月半の短い結婚生活、
毎日相手に愛を伝えた、
織田作が6日も帰って来なくって

喪服を着た太宰が暗い顔をして
家を訪れた時気づいた、
泣き叫んだ、
あの人はもういない、

ただ、唯2ヶ月半前の私たちの写真に
彼の人生で一番幸せな笑顔が映っていた、




織田作誕生日

シリアスでゴメチョ、

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