今日は何の日?(小説)

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パイプオルガンがまさしく
合唱でもするかのように
廃墟と化した教会に鳴り響く、

曲は大詰め、

最大の見せどころまできていた、

パイプオルガンを弾きながら
女性は唄う、


世界中の幸せを願って、


それに魅入られたかのように
教会へ入ってきた帽子の子男は
そっと腰をかけ、
彼女の歌に耳を傾ける、

男は彼女の歌にいつの間にか
瞳を閉じていた、



鳥の羽音が遠くから聞こえ意識を取り戻す、


女性の歌声もパイプオルガンの音も
聞こえなかったが、
眠りについた男に
毛布がかかっていた、

毛布からはあの女性の匂いがした、

太陽のようにあたたかい、

柚子のような匂い、

「子どもたちよ。私たちは、
ことばや口先だけで
愛することをせず、
行ないと真実をもって
愛そうではありませんか。」

と言って彼はその場を立ち去った






キリシタンの日

分かる人には分かる、

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