今日は何の日?(小説)

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俺が北米のスラム街で育っていた頃、
 
独りの少女がナイフを突きつけ

俺に声を掛けた、

「墓場をつくって下さい。」

そう言った少女は

決して揺れないしかしどこか薄暗い
鳶色の目をした奴だった、

最初は生きるため此奴も俺からものを
奪い取ろうとしてるのでは、

そう思った、が、

彼女の向いている方向、

つまりは俺の方、

より 

後ろに立っていた男を見て言っていた、

それに俺は一瞬気づかなかった、

男は酒瓶を俺に叩きつけようとしていた


 バリーン


ガラスの割れる音がしたが

痛みはない、そっと目を開ける、

少女は男の心臓に刃物を突き立てていた、

酒瓶でまともに殴られたのか

少女には痛々しくも

大小沢山のガラスが刺さっていた

「馬鹿なのか…墓場を求むのだったら、
己で作れば良かったものを」

ここら辺では

辛さに溺れて自害するものは
少なからずいた。 

酒瓶のガラスが沢山突き刺さって
死ぬよりましだ、

彼女は言った

「どうせならば生きた証を残して、
死にたい、己から死ぬなどという
くだらない考えにいたるよりも、
他者に己の生きた証を残したい…
私の墓…つくってくれっ……
生きた証を………心に………」

彼女は其処で息絶えた、

冷え切った顔から最後の涙が溢れた、

声はでずとも彼女のために泣いた、


其れから俺は異能を使えるようになった

しかし、彼女は戻って来ない、

彼女の墓場をつくってから、

異能を持ってから数十年、

彼女と同じ目をした男に俺は出会った、

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