今日は何の日?(小説)

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秋の曇り続く今日この頃、

暇を持て余した丁は

ファイルを片手に家へ帰る、

ここ最近では台風が来るとかで

寒い上強い風邪が丁を襲う、

突風にファイルが手から離れる

パサァ! 

唖然と吹き飛ぶ紙を見て、

現状に気づき泣きそうな顔になる、

丁は泣きそうな思いと叫びそうな思いを抑え

飛んでいった紙達を慌てて拾う、

「最悪だぁ…」

見当たる限り最後の一枚と思われる紙を

拾い顔を上げる

目の前に男がいた、黒い外套に包まれた

顔の整った男だった、

サッと何かを私に差し出す、

「貴様のだろう、」

どこか上から目線な口調だが

大切なオペラの紙を拾ってくれた男に

ありがとうといって

紙をもらおうと手をかける、

「オペラが好きなのか?」

そう言う男に丁は目を輝かせる、

「はい!特にオペラ座の怪人が!」

早口に言う私に少し男は微笑んでいった、

「では、今日の夜は開いているか?」

ナンパ?!

そう思った丁は少し考えた、

「丁度このような紙を持っていてな、」

と、取り出されたのは…

「こ、これは…オペラ座の怪人の
S席チケット?!」

2枚目取り出されたそれに私は

ひきつられる

「オペラ座の怪人だったな、
行くのか?行かないのか?」

男の誘いに私は

「条件は?」

こんな美味しい話は普通ない、

男は少し悩んだ後話す

「今夜、黙って僕とオペラ鑑賞をしていれば
安全に家には届けてやろう、」

頼む、といったような輝かしい目で私を見つめる

「良いですけど、私衣装とかないですよ、」
 
今まで此処までの本格的なオペラを

見たことの無かった丁は

衣装を盛っていなかった、

「構わん、衣装ならこちらで用意しよう、
 今からつき合えるか?」

えぇ、といって、彼に腕をひかれる

連れてこられたのは

ブランド洋服店、

入れ、と言われ恐る恐るはいる、

「僕は、余り服などには興味がない、
貴様が選んでくれ、
金は此方で手配する」

いや、でも、と言うものの

男は少し呆れたように丁をみる、

「僕が選んでいいのか?」

「あなたがお金を出して下さるので…」

男は少し考えて店のショーウィンドーに

飾られている

白のドレスとシューズを指差した、

「あれを…」

後悔するのは遅い、

ただ、丁自身も

このドレスとシューズが

綺麗だなと思っていた、

「良いですけど、お金…」

此処まで綺麗だと

うん百万しても可笑しくない

「構わんといっているだろう、
早く仕立ててもらえ、」

そうやってせかす男に

丁は慣れてきて、

「わかった」

と声をかけて、

ドレスとシューズに着替えた、

「お客様とてもお似合いで、」

お世辞なのか、

それとも購入して欲しくて

言っているのか

着替えて鏡を見ていると

何時もの自分とは

本当に違ってみえた、

これがお高い

ドレスとシューズの力なんだなぁ

と改めて実感していると、

「綺麗だな、」

ボソッと男が声を漏らした、

彼をそっと見てみると

彼は顔を真っ赤にして

目を背けて言った

「これで頼む、もう時間が無い、
着たまま店をでるぞ」

請求書の書類を書きながら

彼は言った、

外でタクシーを拾って

オペラ会場へ急ぐ、

「そういえばあなたの衣装は?」

もしかして私の衣装に

お金をかけ過ぎた?!

心配そうに男を見つめる、

「済まない、忘れていた、」

じゃあ直ぐにでも買わないと、

声をかけようと息をのむ、

「羅生門」

瞬間、彼の衣装がスーツに変わる、

「?!」

驚く私に彼は説明してくれた、

「これは僕の異能である
羅生門で形成した、
僕の羅生門は服の形を変える、
時に刃物になったり
鎧のように固くなったり
使いようによっては様々だ、」

丁はへぇ、と驚きながら

男のスーツ姿を見つめる

「カッコイいですね」

本心から思った言葉がポロリと出てきて、

彼は再び顔を赤らめて背ける、

「ついたぞ、」

そういわれて降りた会場は

とてもヨコハマの一角にあるとは

思えないほど豪勢で気品が溢れていた、

彼が手を取り出す、

私はそれに答えるように

しかし、ぎこちなく手を取る

オペラ会場に入り席に座る

10分ほどして、開演する、


たっぷり2時間、楽しんだ後、

わざわざ自宅まで私を送ってくれた、

「あ、あの今日は
ありがとうございました。

一夜だけでしたが
夢のような時間でした、」

彼はでわと言って立ち去ろうとする、

私は彼の背中をみて、

なぜか寂しさが溢れた

「いつか、共に食事でもしないか?」

彼が言った言葉に私はえ?

思考が停止する、

「いや、迷惑だったら良いのだ、
ドレスを着ることなど
あまり無いだろう、
たまにだったら貴様と
そのドレスが似合う食事処にでも…」

男は後ろ姿からても分かるほど照れていた

その姿に私は愛らしいなと思った、

「私でよければお供します、
私は♡と言います」

男は私の名前を呟き、良い名だな、

と言った、

「僕は、芥川、芥川龍之介だ、」

彼と出逢ったのはこれが最初、

直ぐに彼の仕事や、

強さへの欲はわかった、

そんな処も含めて彼を好きになるのは

そう遠い未来でもない

オペラの日

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