今日は何の日?(小説)

□11/26
1ページ/1ページ

「調査依頼のまとめ終わったので
置いて…あ、あれ?」  

付箋に谷崎宛てに

メッセージを書こうとしていた

丁だが、

書いている途中、

インクがつきてしまったようで、

「換えのインクは…」

と引き出しを見てみるものの

「ない、」

一気に汗が噴き出る丁、

丁にとってあの万年筆は

一生大事なもの、

だってあれは…

丁は仕事を放置し、

外に出た、インクならすぐに

見つかる、そう思っていた…

インクが切れてから5時間、

凍えきった身体は今にも死にそうで、

もうとっくに手足の感覚は無かった、

何時も売っていたところは

もう売れ切れていた、

ヨコハマ中の文房具屋を回る、

ズコッ、

足が絡まり転ぶ、

「イタい…」

暖かい涙が出てきて

つめたくなる、

「丁さん!」

目の前に現れた男に驚愕する、

「谷崎さん…」

慌てて立とうとするが

上手く力が入らない、
谷崎が手を差し伸べる、

「丁さん!
皆さんが探してます、」

そうか、そりゃ5時間も

仕事をほったらかしたら

心配されますからね、

「本当にすみません」

といって手を借りる、

「かなり冷え切ってますね、」

といって灰色の外套をかけてくれた

「で、どうされたんですか?
仕事を真面目にやる丁さん
らしくありませんね、」

心配そうに此方を見る谷崎に

丁は心ぐるしくなる、

しかし、言いたく無かった、

特に谷崎には、しかし、

今回は致し方ないと思い、

心を落ち着かせ、話す


「この万年筆、
私の好きな人が入社祝いにって
くれたんです、私、
その人の事が好きなんです、
一目惚れしました、」

その瞬間谷崎の動きが止まる、

丁にも分かるほど


谷崎の顔は真っ赤だった、

「もしかして…」

丁は懐から

一本の万年筆を取り出す、

「ええ、ずっと前から

あなたが好きでした、」

丁が照れ隠し

とでも言うように素早く万年筆をしまう、

唖然としている谷崎に

「すみません、迷惑な話をしてしまって、

さぁっ探偵社に戻りましょう、」

手を引き谷崎を動かす丁、

谷崎は丁の手を引っ張り

自分に引き寄せた、

「た、谷崎さん?!」

ぎゅっとだきよせられ、

自然と体温が上がる、

「行こっか、万年筆のインク探し、」

そういって、丁の手を取り、

走り出した谷崎の顔は

とても嬉しそうだった


ペンの日

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ