今日は何の日?(小説)

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茶を飲む福沢と丁、

今日は久々の休日、

こんな日だからこそ

団子屋で1日ゆったりと

平和な街を見ていたい、

福沢にそのようにして誘われた丁は

午前中は街を一回りして、

此処へ足を運んだ、

抹茶の苦味が舌に残る、

「安寧だな」

福沢が声を掛ける

トスッ福沢の腕に丁が

寄りかかる少し吃驚した福沢だが、

寝ているということが解ると、

起こさないようにと

湯飲みを持ち替えた、

探偵社を開いて与謝野や、国木田、
太宰、谷崎、敦、丁が入って来て、

漸く此の街も昔のような胡散臭さが

薄れてきた気がする、

丁がこうして

茶を啜る己の隣で寝ているのも皆、

全て彼等の尽力なのだなと思う、

それにしても丁は良く寝る、

確かに今日は此処二、三日にない

暖かな陽気に包まれて要る物の、

公の場でしかも異性に寄りかかり

寝てしまうとは…

丁の寝顔が見える、

中々…


カコッカコッ

軽い下駄の音がして其方を見る、

丁も下駄の音に

目を覚ます、下駄の音の主は

鏡花だった、

「鏡花ちゃんどうしたの?」

少し慌てた様子の鏡花に

丁は心配そうに声を掛ける、

鏡花はキョロキョロと辺りを見渡し

丁と福沢に真剣な表情で云う

「豆腐が危ない…」

……顔を見合わす丁と福沢

「どういう事?」

丁が矢張り心配そうに

鏡花を見る、



鏡花曰わく街を歩いていると

美味しそうな甘味処を発見し、

店のショーケースをじっと見ていた所

一組の老婆の観光客が

何やら話していた、

「そうじゃ、今日は
豆腐を買ってこんと」

一人の老婆が言う、

「ああ、今日は豆腐に
針を刺す日かえ、」

店のショーケースをじっと

見つめながらその話を聞いていた

鏡花はそういう人もこの世の中には

居るのだろうと想いながら

ショーケース越しのサンプル達が

皆湯豆腐に見えてきていた、

どうしようも無しに

その場を立ち去り

探偵社に帰ろうとすると、

与謝野先生が敦を連れ出し、

ショッピングをし終わり、

探偵社に帰るところだった、

「与謝野先生、こんなに一杯、
豆腐何て買ってどうするんですか?
真逆、鏡花ちゃんに湯豆腐を食べさせてなにか…」

与謝野に睨まれ言葉を飲み込む敦、

鏡花は様子を窺った

「違うよ、今日は豆腐に
針を刺す日なんだ、
こうやってひとぉつひとぉつ
丁寧にねぇ」

敦の腕を豆腐がわりにして

一本一本突き刺す、

イタそうにする敦の声に

先程の老婆の会話が蘇る、

豆腐が危ない其処で今に至る、

 

「なるほど、其れは変な話だね、」

丁がいい子いい子と

しょんぼりする鏡花の頭を撫でる

「特に変なところは無い、
今日は針供養と言って、
針を豆腐や柔らかい物に刺して、
針の日頃の疲れを癒やすのだ、」

福沢の知恵袋的な解説に、

丁はへぇっと少し驚いた、

鏡花は納得していないようで 

「豆腐が…串刺し…」

丁は困ったように

鏡花をみる

「鏡花ちゃん、
豆腐は鏡花ちゃんの今着ている
着物とかを縫ってる針を
癒してるんだよ、
だから決して傷つけられてる訳じゃ
ないんだよ、」

必死に鏡花を元気付けようとする丁に

福沢が云う

「湯豆腐でも食べに行くか、」




針供養の日、
またもや意味不なオチごめんなさい

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