今日は何の日?(小説)

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いつものように折り畳みの

白杖を開き丁は

散歩を始める、


見えない、どこも、


どんなところを歩いても

真っ暗のはずだった、

今日は赤と青それに…

丁の視界は

真っ暗と言うわけではなかった、

しかし決して人や物の姿形が

映る訳ではなかった、

赤、青、黄色、色んな色で

表された人の感情だけを

丁は見る事が出来た、

お陰様で丁が

盲人では無いのではないかと

疑われる事が少なく無かったが、

彼女の人の良さからなのか、

自然と周りは彼女の能力を

信じていった、

今日は、

久々の休みという事もあって

彼女は街の人々の感情を

良く見ていた、

細い路地に入ってふと気づく、

先程から丁を

追いかけている色

丁は大通りに出るため

素早く白杖を振り、

通りを見つける、しかし、

追っての方が早かった、

「先程から私を追って、
何が楽しいのです?」

私は仕方もなしに

相手に怒り気味な声をかけ

様子を伺う、相手の感情は元々黒、

悪さを働こうと言うわけだ、

其処から、赤色に変わった、

不味い、相手に威嚇しすぎた、

丁は方向を変え、

逃げようとするが、

相手の方がはやい、

白杖で対抗しようとする丁を

後ろから掴む、

「ちょっと!離しなさいな!」

バタバタ暴れる丁に

相手は少し手間取りながらも、

路地の奥の方に

丁を引きずろうとする、

急に丁の腕を掴む相手の力が緩む、 

丁が男を見てみると緑…


眠っているようだった、

何故だ何故だと丁が考えて、

辺りを見渡した、辺りに人影は…

「貴方が助けて下さったのですね?
ありがとうございます。」

丁は微笑みながら

黄色を放つ人物にお礼をいった、

緊張感を持っているのか

そう言えば此の色は久しぶりだな

丁はそんな事を思いながら

改めて人影を見てお願いした、

「すみませんが、そこらへんに
白杖が転がっているはずですの、
取って頂けないかしら、」

そこらへんを見渡し再び恩人を

見てみると恩人は紫になっていた、

丁は相手が悩んでいるのだと

気づき、訳を話した、

自分は目が見えないこと、

人の感情が色として見えること、

恩人は再び薄桃色になっていた、

「ルチア…」  

若い男の声が聞こえた、

最初何を言っているのか

解らなかったため丁は

不思議そうに首を傾げた、

「君は…聖ルチアの様だね、」

丁にはルチアという

人物について知識が無かった、

「聖ルチアは視覚の守護聖女とされていて、
目をくり抜かれてもなお、
目が見えたとされているんだ、」

少し想像した、

只の垂れる皮となった瞼の下から

たれ落ちるのは真っ赤な、

そう、真っ赤な血、

其処にあるのは痛みか悲しみか、

声からして若い男と思われる色が

丁の手に白杖を渡す

「僕は何色に見える、」

急な質問に戸惑って

「薄桃色です、」

と答える、

「それは?」

感情の意味を知りたいのだろう、

「家族に対する愛です、」

彼は少し黄色に成って

再び薄桃色に変わった、

彼から家族の話を聞き

その家族を羨ましいと思った、

それが彼と私の出会い、

眼・視覚障害者の守護聖女

「聖ルチア」の聖名祝日。
ルチアは3世紀のイタリア・シチリアの貴族の娘であるが、母の病が聖アガタの墓前での祈りにより全快した奇跡により、終生貞潔を守り神に仕えることを決意した。ルチアには異教徒の婚約者がいたが、彼女がキリスト教徒となったことに失意し国に密告した。改宗を拒んだことから売春婦となる刑が言い渡されたが、奇跡が起きて彼女の体はその場から動かなくなった。そこで拷問として両目がえぐり出されたが、奇跡が起き目がなくても見ることができたという。
スウェーデンでは、クリスマスに若い女性が「ルチアの花冠」を被ってパンとコーヒーを恵まれない人に配る風習がある。怒りの赤。悲しみの青。喜びのオレンジ。好意の黄色。

聖ルチアの日

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