今日は何の日?(小説)

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「私との初デートを覚えているかい?」

高級そうなシャンパンを片手に

白スーツをビシッと着こなした男が

私に何気なさそうに尋ねる、

私は「覚えて居るわけ無い」と、

とっさに冷たい嘘を吐く、

私はこの白スーツの男、

いえ、フィッゼラルドを

愛してなかった、いえ、

正しくは本当はとても愛してるのだ、

が、

素直になれない、

お陰様で連日組合の仲間には

お酒と私の愚痴に

付き合って貰っている、

本当不思議な程、

ツンデレではなく、

常にツンツンなのだ、

と言うことで私は彼に嘘を吐く、

彼は呆れたように手を広げる、

そんな事があったのは

何時のことだったか、



ついこの間の様な気もするし、



随分昔のような気もする、



あの日私はとても嫌な予感がした、

本当に今までなかった程、

とてつもなくドロリとした

溶岩のような物が

身体にまとわりついたようだった、

フィツゼラルドが居なくなった、

直後にその事実を聞いた私は

駆けだしていた、

冬の冷たい雨が体中に刺さる、

結局組合の仲間に止められ私は

自宅に帰った、

仲間が見舞いに来てくれたのを

無碍に追い返し続けてしまっていた、



「外に出よう」


そういってくれた仲間に

やっと答えることが出来たのが先程、

何処に行きたい?と言われた時に

何となく、初デートの事を

思い出して市内の高級水族館へ

行った、あの人らしい

高級感の或る水族館、

でも何でだろう、あの人と来たときは

とても、とっても輝いて見えたのに


今は…





ねぇ、御免ってば!



初デートの事覚えてるから、


あの時の貴方の笑顔を私は覚えているから

 
いつものように名前、しつこく呼びなさいよ!


ねぇ、帰って来てよ!


貴方が居ないと、私の見えるセカイは何時までも白黒じゃない


私の涙は何処か虚空へと消えたようだった











スコットギーフィツゼラルド先生の
命日

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