今日は何の日?(小説)

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カランカラン

 はちまきを巻いた男が鐘を鳴らす、

理由は簡単、丁が買い出しをしていた商店街のくじで、
一等と黙される金の玉を出してしまったから、

一気に周りの主婦たちの
様々な感情の混じる視線が集まる♡、

手に汗握るとは正に此のことだ、


渡されたのは、一枚のチケット

内容は阿智村という
日本一星空の見える村へのバスツアー

しかもペア。

丁は迷った、
一人で行っても良いとは思う、

けど、此処は…

と考えているうちに
職場である探偵社に着く、

チケットを使い古した
長財布にしまい、

武装探偵社とかかれた扉を開き
只今戻りました、
とだけ声をかける、

丁が机に荷物を置き、
改めて周囲を見渡し、
異変に気づく、
明らかにみんなの丁を
見る目が変わってる
丁は直ぐにも察した、

此は…とてつもなく
面倒な物を当ててしまった、

くじ運がいい方ではない丁に
突然舞い込んで来た
一枚のペアチケットは、
自分の周りをこんなにも
変えてしまうのだなと
丁は苦笑しながら

早く此の事態を終わらせようと

会る人物を探した、あれ?居ない

焦る丁に探偵社の扉が開く

「社長、おかえりぃ」

乱歩君の猫の様にのんびりした声に
丁は即座に反応する、

「社長!」

丁が社長に近づきながら
財布からチケットを取り出し、
話しかけるのを他の社員は
ジッと見ていた、

「あの此、日頃から
お世話になっているんで、
良かったらどうぞ、」

丁がラブレターでも
渡すようにチケットを福沢に
向け伸ばした、

丁は下を向いている為、
福沢がどのような顔をしているか
解らなかったが、

ほかの社員は見ていた、

福沢が少し照れるように、
顔を赤くしていた、

「気持ちはありがたい、が、
せっかく当てたのだから
此は君のだ、他の誰かと
一緒に行くべきだろう、」

福沢にそう言われた丁は
噂の広まる速さに少し驚きながらも
悲しそうにチケットを見返した、

そんな姿を見て福沢は少し戸惑う、




「一緒に行くか?」


その言葉が本当の始まりだった、
福沢は前日の夜まで気づかなかった、

その…
同僚、ましてや
年頃の女性と観光であれ、
二人きりで何処かへ行くということが
どれだけ自分に対しても、
相手に対しても、愚かな行為なのか、
考えている間に夜が明けた、

福沢に他の事を誤魔化せる余裕は
余りなかった、

取り敢えず朝早く待ち合わせた横浜駅に、
間違えて一時間も前に来てしまうほど
この日の福沢は通常では無かった、

楽しみですねぇと
微笑む丁が愛おしくて、
自然と口角が上がってしまった、

観光チケットと荷物を添乗員に渡し、
乗り込む、丁は窓際の席、
福沢は通路側の席に腰を下ろした、

見慣れた街並みが遠のき、
高速道路や、見慣れぬ町が
目の前を通り過ぎた

その間丁と福沢は
最近の出来事について話したり、
お互いの身の上話をしたりと
楽しい時間を過ごした

「福沢さん!」

丁が目を輝かせて
窓の外を見る、 

「雪ですよ!」

丁が余りにも
はしゃぐ物だからか、
福沢も、窓に顔を近づけ
外の眺めを見た、

一面広がる銀世界に、
福沢は此は此で風流で
良いものだなと、
心の奥其処から思った。

「風流で良いものですね、」

丁が福沢と同じ事を 
考えた物だから
思わず丁の方を向く、

ガタン

タイミングを見計らったように
バスが大きく揺れた、
思わず体制を崩し、
丁を押し倒すような形になる

お互いの顔を見合わせ唖然とする、

「嫌だったら、嫌だと言ってくれ」

己でも何を言っているのか解らない、

ただ、頭がぼっとする、

ゆっくりと縮まる距離と長引く沈黙…

沈黙は崩された、

「社長キスした?」

「あぁ乱歩さん声大きいです!」

「敦お前もだ!社長に今バレたら
見逃すだろう、」

小声で言ったつもりなのだろうが
福沢の耳に入っていた、
さっと後方の声のした席を
立ち上がって見る、

「「「あ、」」」

国木田、中島、乱歩の三人と目が合う
よく見ると他の社員も皆乗っていた、

「此は事故だ、」

心の奥底から思った、
サッと何事も無かったかのように
席に座り丁の方を向く
リップ音が目の前で響く、

甘い桃のような甘さが微かに残る、
丁は口パクで言った、

「続きをいつかしてくださいね?」

丁の悪戯めいた笑みに、

福沢は丁の手を少し握った











福沢「何故此処にいる、」 

敦・国木田・乱歩「はい…」

敦「乱歩さんが、異能でこうなるって予測したので」

乱歩「皆で話してたら、社長ってどうやって女性を落とすのかなって」

国木田「話が広まりすぎて、こうなりました。」

福沢「…」



観光バスの日

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